ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

コモンの再生

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

世界はとてつもなく広い。

何だかんだで日本も広い。

 

社会というものは

この広い世界に何億人という人々が

それぞれの人生を歩みながら

できあがっているのですよね。

 

しかも実にいろんな方がいますから

考え方も、行動も、

まさに千差万別であって

その集合体の社会ですからね。

 

もうとんでもなく様々なことが起こるわけです。

 

それに絶望するのか、

受け入れて楽しんでいくのか。

 

随分と違う人生になりそうですね。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 コモンの再生 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 コモンの再生 』

内田 樹 文芸春秋 を読みました。

 

内田さんの著書であれば

私は原則何でも読む方針ですし、

何せ著書がとても多い方ですから

今までも結構読んではいるのですけど

おそらくこれからも結構読むのだろうなと思ってます。

 

今回は「コモン」がテーマですけど

ん?顧問なの、古門か、小紋か、と

最初は腑に落ちなかったのですが、

【 common 】だったのですね。

 

共同、共有、共通、

公共、一般の、ありふれた、

普通の、よくあるというような意味合いですね。

 

そうかぁ。

そこに内田さんは問題意識を持っているのか。

 

私などにとっては

ごく普通の日常ですし、

当たり前のようにそこにあるものですから

深く考えたことがなかったな。

 

でもそこから出発しないと

世の中の構図、構造、仕組みを理解し、

自分自身のサバイバル戦略を立てることにも

影響が出てきそうです。

 

いつもの如くなのですけど

メチャクチャ学ぶ気で読み始めました。

  1.  
  2. 目次

1 “公共”を再構築する

2 これからの政治を語ろう

3 隗より始めよ

4 ゆらぐ国際社会

 

感想

2020年11月に発行された本ですけど

取り上げているテーマには若干古さを感じますけど

内田さんの主張は常に斬新であり、

この発想力は本当に学ぶところが大きいです。

 

あ、そういう見方もあるのか?とか

その角度で攻めるのか?と

私自身の視野の狭さを感じさせられながらも

もっと幅広く見て、考える必要性を

しみじみと感じさせてくれます。

 

本書でも実に様々なテーマを取り上げており

終盤は人生相談のようなものもありますが、

内田さんの考え方は

他にはそう滅多にない

それこそ唯一無二のようなものであり、

自分自身の知性をグラグラ揺らしてくれます。

 

それが大変に心地良くて

蓋をしていた自分の考えを

まだまだ甘いと蓋を開けてもらって

新たな発想を授けてくれます。

 

いつもながらのことではありますが

内田さんの著書は永遠に読み続けていきたいです。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。

 

目先の銭金のことにとらわれて

巨視的な算盤がはじけない人が

制度設計するとこういうことが起きるんです。

(P.27)

 

今だけカネだけ自分だけ。

 

こういう風潮が広がってきて

自分で自分の首を絞めているのが

現代を生きる我々のリアルな姿でしょうか。

 

土地って、

本来私有すべきものじゃないと僕は思います。

誰かが一定期間管理責任を負うのはいいけれど、

土地は絶対に私物ではない。

(P.34)

 

我が国では戦国時代から

土地を私物化するために

命を懸けて戦ってきたのですよね。

 

それが良いとは思いませんが

そう簡単には変わらない気もします。

 

既得権を死守したい人は多いでしょうし、

「公」が私利私欲に走ることも多いですから。

 

新たな「世界標準」を創り出すことが

できる人のことを「天才」と呼ぶのだと僕は思います。

彼らが人類に豊かな贈り物をしてきて、

僕たちはその恩恵をこうむってきた。

だから、それほど才能のない人たちは、

才能のある人をやっかんだり、

足を引っ張ったりする暇があったら、

その人たちがのびやかに才能を発揮できるように

支援すべきだと僕は思います。

どう考えても、

その方が集団的な生存戦略としては

効率がいいんですから。

(P.59)

 

天才をスポイルするのが

我が国の欠点でしょうか。

 

天才は海外で成功し、

天才を凡才がコントロールしようとして

天才性を失わせているのが現実ですよね。

 

希望を語れば嘘になるし、

不安を語れば「非国民」と罵られる。

未来について語ることが禁忌になっている。

だから、しかたなく過去について語っている。

それが「昭和懐古」の実相ではないかと僕は思います。

(P.79)

 

過去に生きるというのは

あまり健全ではないように思えます。

 

たまに懐かしむくらいならいいですが

昭和に戻れ、昭和に戻りたいというのは

非現実的であるのではないでしょうか。

 

日本の劣化は劇的な速度で進行していますけれど、

国民の多くはその事実そのものを知らない。

それは、メディアが日本の現状を冷静に報道し、分析し、

対策を提言するだけの知的活力を喪失してしまったからです。

(中略)

これらの指標を危機的な兆候だとみなして、

何とか国運回復のための手立てを講じなければならないという

ひりひりした危機感は

今の日本の官民のどこにも感じられません。

(P.91)

 

メディアの劣化であるとか

官僚が首根っこを政治家に掴まれているとか

そう言うのは簡単ですけど

それでは何も変わらないですよね。

 

システムを変えるのが

最も手っ取り早いですけど

何が何でも変えさせないという

既得権者が多いのが

この国の衰退の根本的な要因と言えそうですね。

 

権力者がその権力を誇示する最も効果的な方法は

「無意味な作業をさせること」です。

合理的な根拠に基づいて、

合理的な判断を下し、

合理的なタスクを課す機関に対しては

誰も畏怖の念を持たないし、

おもねることもしません。

でも、何の合理的根拠もなしに、

理不尽な命令を強制し、

服従しないと処罰する機関に対して、

人びとは恐怖を感じるし、

つい顔色を窺ってしまう。

今の日本の権力者たちは

他の点では多くの問題を抱えておりますけれど、

「マウンティング」の技法には熟達しています。

(P.130)

 

役所への手続きやら許認可が

どれだけ活力を削いでいるのか?

 

全てが無意味とまでは言いませんけど

こんなん意味ある?と疑問に感じることは多く、

マイナ保険証などもそうですが

メリットを提示できなければ

さすがに国民もお上の言う通りにはなりません。

 

合理的から遠ざかれば

政策も履行できないのではないでしょうか。

 

これから必要になるメディア・リテラシー

とりあえずは「嘘つき」と

「いい人なんだけど、脇が甘い人」にタグをつけて

「眉に唾をつけてから話を聞く」という

態度なんでしょうね。

(P.155)

 

嘘と誹謗中傷が蔓延る社会ですから

このままではいけないのは確実ですよね。

 

でも嘘や誹謗中傷にメリットが大きく

デメリットが小さいのであれば

小賢しい人はそれを選択するでしょう。

 

厳罰化が待たれるのでしょうか。

 

日本企業の生産性が落ちたのは

「残業のし過ぎ」のせいだと思います。

60年代までの勤め人は

みな定時になったらさっさと帰ってましたよ。

でも、その頃が経済成長の絶頂期だった。

過労死するようになってから

生産性がガタ落ちしたんです。

いい加減にルーティンの大切さに気づいて欲しいですね。

(P.178)

 

残業も一因かもしれませんけど

私が感じるのは

全てを一律にしようとする政策です。

 

いくつかの選択肢を提示し

自らが選べるようにすること。

そしていつでも変更が可能であること。

 

そういう制度にしたほうが

機能するのではないかと思うのです。

 

もちろん、SNSを使って

セルフプロデュースをやりたいという人は

お好きになさればいいと思います。

でも、自分で身銭を切ってでも

発信したいことがある人以外は、

いずれ発信するネタがなくなるんじゃないかな。

こういうのは、行きずりの人の袖をつかんで

「お願いだから、僕の話を聞いて下さい」という

かなりはた迷惑な行為なんですから。

自分が言わないと他に言う人がいない、

自分がしなければ他にする人がいないという

切迫感がないと続きません。

(P.208~209)

 

だいたいSNSで小遣い稼ぎをしようとか

高額な報酬を得ようという

その発想自体がおこがましいですよね。

 

youtuberが

あっという間に廃れたのと一緒です。

 

アフィリエイターなんかも

風前の灯火ではないでしょうか。

 

手段と目的が混乱しているように思えます。

 

多くの人に有益な情報を届け続けていれば

自然とビジネスとしても成立するでしょう。

 

それを無視して

カネ、カネって

そんなのが通用する世界じゃないでしょう。

 

政治的理想の実現を

これまで阻んできたのは

その非寛容さだと僕は思います。

わずかでも自分の意見に反対する人間、

同調しない人間に対して

理想を語る人間たちが下す激烈な断罪。

それが結果的に

「人間が暮らしやすい社会」の実現を遠ざけてきた。

僕は別に人間の弱さ、愚純さ、邪悪さを放置しろと

言っているわけではありません。

そうではなくて、それは処罰や禁圧の対象ではなく、

教化と治癒の対象だと申し上げているのです。

場合によっては、罰するよりも、

抱きしめてあげることによって

暴力性や攻撃性は抑制されることがある。

全員が善良でかつ賢明でなければ回らないような社会は

制度設計が間違っています。

一定数の「大人」がいて、

自分勝手なふるまいをする「子ども」たちの分の

「しりぬぐい」をする。

それが人間たちの社会の「ふつう」です。

一方に身銭を切る人たちがいて、

他方にそれに甘える人がいる。

それは仕方のないことなんです。

彼らは悪人であるのではありません。

たとえ老人であっても、

権力者であっても、

大富豪であっても、

彼らは「子ども」なのです。

全員が利己的にふるまっていては

共同体は持たないということが

まだわかってないのです。

(P.249~250)

 

少し長いですが

本書において私が最も感じ入った部分ですので

あえて全て記載しました。

 

大人が減少している社会。

子供が増加している社会。

 

年齢ではなく

精神や行動や思考というように考えると

空恐ろしい事実ですね。

 

今だけカネだけ自分だけ。

幼稚な大人が増えることで

知性は欠如し

私利私欲と守旧派が社会を壊し続けています。

 

そろそろ巻き返さないと

この国は完全に詰んでしまうのかもしれません。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。

 

非常に様々なテーマを取り上げており

いつもながらではありますが、

大変に勉強になりました。

 

内田さんの著書は

一生涯のお付き合いとなりそうです。

それがとても心地良いです。

 

いつも有難うございます。

これからもたくさんの本を書いて下さいね。

 

それでは、また…。

 

 

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