ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

思いつきで世界は進む ー 「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

見えないものを見ようとしても

やっぱり見えないと思うんですね。

 

じゃ、見ようとするのは無駄なのかと言えば

それはそれでそこそこの価値はあるんじゃないでしょうか。

 

仮に見えなかったという結果に終わるとしても

見ようとしたという姿勢は積極性は買いですし、

そこから何かを感じたならば

それもいいことだと思うんです。

 

最もしてはいけないのは

見えていないのに見えたと思ってしまうこと。

 

つまり見えた「フリ」ですね。

 

わかった気になるって危険です。

わからないものはわからないままで

しっかり保留しておくほうがいいと思います。

 

見えなかったものは

見えなかったでしまって置いておかないと

自分を勘違いさせてしまいますよね。

 

これは生存戦略上でも

「基本」と言える大事なことです。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 思いつきで世界は進む

     ー「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 思いつきで世界は進む

     ー「遠い地平、低い視点」で考えた50のこと』

橋本 治 ちくま新書 を読みました。

 

橋本治さんに関しては

以前に敬愛する内田樹さんとの対談本を読んで

興味を持ちました。

 

ka162701.hatenablog.com

 

内田さんとのざっくばらんな対談から

橋本治という人物は面白いと思って、

取り急ぎ1冊だけでも買っておこうと思い

ポチっとしたのが本書です。

 

ハッキリ言っちゃうと

タイトルだけで買いました。

 

本来ならばヒットした小説を

読むべきなのかもしれませんが、

私はエッセイのほうが読みやすいですし

何より橋本さんの考え方がわかっていいかなと思って

セレクトしました。

 

さて、どう出るでしょうか?

楽しみにして読み始めた次第です。

 

目次

第1章 バカは忘れたころにやってくる

第2章 いったい日本はどこへいく

第3章 誰もが話を聞かない時代

第4章 思いつきで世界は進む

第5章 世界は一つなんて誰がいった?

 

感想

ふむふむ、なるほど。

意外と軽いタッチで書かれていて

なおかつひとつのテーマは4ページほどですので

読みやすいこと間違いなしです。

 

社会問題に鋭く切り込む!というスタンスとは真逆で

冷静かつ穏やかに社会問題を真摯に受け止めて

自分はこう思うんだよね…とか

こういう見方も成立するかもね…とか

変に自分の主張に賛同を求めるのではなく

また読者をある方向に導くのでもなく、

ただただ僕はこう思うんだけどみんなはどう?という

地に足の着いた問題提起とでも言いますでしょうか?

 

それが心地よくて

あっという間に読み終えてしまいました。

 

これをスラスラと読み終えてしまうのも良し、

これをきっかけとして

自分でさらに探求するのも良し、

自分自身で深い考察をするのも良し、

そんな契機をもらった気がします。

 

たかが1~2冊の本を読んだからって

橋本治を理解したなんて

おこがましくて言えませんが、

何となく、こういう人なのかな?という

おぼろげながら

人となりの一端が理解できたかもしれません。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。

 

神酒所に来るジーさんの中では、

世代交代が起こっている。

どういう段取りでかは知らないが、

ジーさん達のグループ内に入れ替えは起こって、

しかし町の変化と共にジーさん達は孤立して行く。

ジーさん達のグループは外に向かって開かれていないから、

「みんなで祭やろうぜ」のアピールが起こらない。

そんなアピールの仕方を知らないから、

必然的に孤立して、

排他的なグループになってしまう。

(P.43)

 

話しの前後が把握できないと

言わんとするところは伝わりにくいかもしれませんが

少なくとも高齢者の孤独という点では

いろいろ考えさせられるところがありますね。

 

既得権を話さない老害のような人は

さっさと退場しろと思いますし、

不運な境遇で孤独になってしまった人は

何らかの社会的なセーフティーネットがあるといいですね。

 

ジーさん達の最も悪いところは

ジーさん達で固まるということ、

そして偉いと勘違いして傲慢なことでしょうか。

 

でも真摯で、博愛主義で、

素直に頭が下がるような人格者もいらっしゃいますね。

 

もっと社会に関わって

ジーさんであることを認めずに

いつまでも若くあって欲しいものです。

 

民主主義国家の憲法は、

国民というものの側に立って、

うっかりすれば国民の権利を規制しかねない

国家権力を縛るものです。

それが民主主義国家に於ける

憲法の第一原則であるはずなのに、

日本人の多くは「国家権力を縛る」という

発想を持ちません。

「国家権力を縛るのが憲法なんだよ」と言うと、

「え!?そうなの?」と言う人が当たり前にいます。

学校ではその大原則が教えられませんから、

ほとんどの日本人は知らないままです。

(P.60)

 

憲法改正論者こそが理解しておらず、

勝手な理屈で自分たちの都合の良いように

改悪しようとしていますからね。

 

お前たちを縛るために

憲法は存在してるんだよと

私たちが声を大にして上げねばなりません。

 

昭和という時代が終わったということは、

一つの時代が終わっただけではなく、

「その後の方向を見失った」ということでもある。

昭和が終わって四半世紀が過ぎて、

このことだけは確かだろう。

一つの時代は終わっても、

人の社会はまだ続いて行く。

だから、ゼロからやり直す覚悟をする必要がある。

その覚悟を抜きにして

「終わった時代」の後を辿り、

あれこれ言っても、

あまり意味はないんじゃないかと思う。

(P.77)

 

私自身も昭和生まれなので

昭和に対して懐かしさのようなものはありますけど

その後の平成、令和に頭が切り替わってます。

 

私よりも年長の方は

昭和で生きた期間が長いので

このような感慨を持つでしょうか。

 

令和以降も人の社会は続いていきますから

過去を学びとすることはあっても

未来に目を向けていきたいですね。

 

知らなくても分かることはあるし、

知らないから見えて来るものもある。

真面目な善き人達は

あまりそういう考え方をしないけれど。

(P.81)

 

これ、知性を持つ人であることが前提ですけど

よくわかります。

 

むしろ知っているか知らないかよりも

知性と教養がある人かどうかのほうが

実は大きいのかもしれません。

 

「手続きの中に重大な意味がある」ということを、

どうやら人はあまり理解してくれません。

そこを素っ飛ばして、

「二者択一のどちらかを選べ」という方向に、

割合簡単に進んでしまいます。

でも、「手続きの中に重大な意味がある」と知っていて、

これを素っ飛ばして、

たやすく二者択一の一方に誘導することに

長けた人はいます。

(P.121)

 

何でもシンプルにして

二者択一にするというのは

知性の欠如であると思います。

 

残念ながらこの国では

学歴は高くても

知性の低い人が中枢を占めているので

二者択一という安易な選択肢を提示して

民をバカにしているのでしょう。

 

早く気づかなきゃいけませんね。

 

「経済学の理論は、

 世界を覆わなければ納得されないものである」

と考えれば、

社会主義は正しいから全世界に広がるべきだ」

という考え方と、

グローバリズムは正しいから全世界に受け入れられるべきだ」

というのは

同じ考え方だということが分かる。

「なんだ、そうなのか」である。

自由主義経済が社会主義経済と対立していたのだって、

自由主義経済も経済学の理論だから、

「世界を覆う」という欲望を必然として持っている。

同じく「世界を覆いたい」の

社会主義経済と対立するのは事の必然だが、

なんで経済学の理論は

世界を覆わなければ気がすまないのだろう?

(P.202)

 

なるほどなと思いました。

経済とは何と恐ろしいものなのでしょうか。

 

日本語には「足るを知る者は富む」という

素晴らしい格言がありますけど

経済はどこまでも成長を求めて、

他国をも飲み込んでしまうのですね。

 

結局、民主主義や共産主義

資本主義、社会主義という

目指す経済の違いとも言えるのかもしれません。

 

「自己主張ならその受けてはなくともいいが、

 自己承認欲求だと受けてはいるな」と気がついた。

相手がいなくても勝手にできるのが自己主張だが、

自分を認めてくれる相手を必要とするのが自己承認欲求で、

そう思うと「なんでそんな図々しいこと考えるんだ?」と思う。

世の中って、そんなに人のことを認めてなんかくれないよ。

(中略)

自己承認欲求というのは、

今や当たり前のように広がっているらしい。

ということは、

「自分はその存在を誰かから認められていいはずだ」という

願望を持つ人が当たり前に存在しているということで、

しかもその「認められてしかるべきだ」で提出するものが、

どうってことのないものだったりする。

つまるところ、誰もが皆、

「私は認められてしかるべきだ」と思う根拠を

勝手に勝手に持っているということで、

人間の平等はそのような形で達成されちゃったらしい。

(P.216~217)

 

これを平等と言っていいのでしょうか?

私には大人の幼稚性であると思いますし、

そこには自己承認できないレベルの自分がいて

SNSなどを通して

誰か認めて、ねえねえ、僕スゴイでしょみたいな

非常に子供っぽい事態が

この社会を蔓延していますね。

 

いいのかな…このままで。

いや、良くないよな…。

 

評価

おススメ度は ★★★☆☆ といたします。

 

社会にある問題って実に様々ですけど

正確に問題を掴んでいるのか?

 

たぶんここが肝心要のところなのでしょうね。

 

メディアが騒ぎ立てる問題は

ある種のバイアスが掛かっていて

それを丸ごと信じるわけにはまいりません。

 

橋本さんは独自のモノの見方で

この問題把握をしやすくしてくれているとも言えそうです。

 

本書から何を感じて

これからどう考えてどんな行動に繋げるのか。

 

そんなきっかけになりそうな

とてもユニークな内容でした。

 

それでは、また…。

 

 

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