ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

下り坂のニッポンの幸福論

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

この国はどうなるか?

ああでもないこうでもないと

多くの人が自分の意見を言うのでしょうけど

実際のところは

どうなるんかね?

本書にはそのヒントがありそうじゃないですか。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 下り坂のニッポンの幸福論 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 下り坂のニッポンの幸福論 』

内田 樹 想田 和弘 青幻社 を読みました。

 

いつもの如く内田さんの本は即買い、

そして適宜読んでいくわけですが、

今回の対談相手の想田和弘さんは

私の勉強不足で存じ上げませんでした。

 

ただ内田流の幸福論に触れられるなら

そりゃ読むしかないわけです。

 

どんな話しの展開になるのか?

ワクワクしながら読み始めました。

 

目次

第1章 「自然の流れ」に合わせて生きる

     ー直進する時間と循環する時間

第2章 「地方の余白」に可能性がある

     ー都市型グローバル資本主義からの転換

第3章 「新しい価値」を生み出す

     ー心と身体感覚を研ぎ澄ませる

第4章 「暇と退屈」が人生を豊かにする

     ー時間貧乏から時間富豪へ

第5章 「里山再生」が文明と自然をつなぐ

     ー野生の反逆と向き合う

第6章 「自分の幸福」が世界を平和にする

     ー現代社会に通ずる仏教の教え

 

感想

いつもの内田節が炸裂しながら

少し異質な対談相手である想田さんの

穏やかさやゆったりした感じが

いい感じのハーモニーを醸し出しています。

 

対談場所は

想田さんがお住まいの岡山県牛窓というところ。

かなり風光明媚なところらしいです。

 

だからでしょうか、

自然に関する話題が多く

現代社会はあまりにも自然をないがしろにし過ぎていて

人との共生の議論に関しては

大変興味深く思いました。

 

想田さんはドキュメンタリー映画を撮る

映画監督でもありますから…

それも自然派で、静かな方のようですから

ある種のリアリズムと

静かなること林の如くではありませんけど

独自のスピード感と

穏やかな語り口に好感が持てました。

 

内田さんはいつも通りです(笑)。

このお2人の対談は

きっと内田さんがほとんどしゃべっていたんじゃないかな?

 

内田さんを敬愛する私としては

それでも充分満足ですが、

もう少し想田さんの考えを深掘りしてみると

もっと面白かったのではないかと思いました。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。

 

自分自身を実験台にして

宗教的経験を観察するというのは

なかなかできないことですよ。

自分自身の心身の変化をモニターするのって

大変な仕事なんです。

モニターするためにはメタな視点から

自分を見ないといけない。

でも、メタな視点から俯瞰的に自分を観察していると、

「行」に没入する妨げになる。

(P.34)

 

自分を見つめ直す必要って

長い人生の中でも時々あると思うんですけど

その際に必要なのはメタな視点でしょうか。

 

でもメタな視点だけでは

自分を奥深く追求できないのでしょうね。

 

「自分がいなくなると困る人がいる」というのは

人間が生き延びようとするときの

最大のインセンティブなんじゃないでしょうか。

(P.63)

 

これはわかる。

そしてこれくらいにシンプルなほうが

信頼性が高いと思う。

 

集団として生きてゆくために必要なもの、

食料やエネルギーや医療や教育は

「要る時には海外から金で買う」というわけにはゆかない。

たとえコストがかかっても戦略的備蓄が必要だということに

みんな気がついた。

(P.70)

 

パンデミックの時の分析ですけど

確かに一時はそうであったと思います。

 

でもすでに失ってしまった感覚でしょうか。

また近いうちに困る時が来そうですね。

せめて国に仕える優秀な方々は

こういう観点で備えを打っておいて欲しいものです。

 

目先の損得を追いかけているだけでは、

長期的には破滅的な事態になるということが、

自分では判断できなくなっている。

(P.88)

 

今だけカネだけ自分だけ。

こういう風潮が強まるばかりの現代社会ですから

必然的にこうなるでしょう。

 

長期的にこの国は、こういう人達は

いったいどうなってしまうのでしょうか。

 

そのためには空振りすることも良しとする、

ある種の勇気とゆとりが必要なわけですけど、

現代では余裕がないせいか、

空振りが許されない空気が支配的な気がします。

失敗ができない。

だから目の前の現実に追随する「後手」を選択する人が

「リアリスト」だということになる。

でも、実際には、皮肉なことに、

後手に回れば成功できるわけがない。

つまり失敗する運命にある。

(P.100~101)

 

確かに余裕のない時代ですし、

失敗は許されなくなっています。

そしてみんながキツくなっている?

これが最善なのでしょうか。

 

今の日本の政治システムは

「株式会社のようなもの」ですらなく、

「株式会社以下のもの」になってしまったと

僕は思います。

(P.115)

 

私自身が株式会社を経営する社長ですし、

今までも社会人になってから

ずっと株式会社で勤務をしてきました。

 

そんな私から見ても

株式会社がいいとは思えず、

ネオ株式会社というか

もう全然違う形態を

編み出していかなきゃいけないように感じるのです。

 

それなのに政治も行政も株式会社化してしまうのは

大きな過ちではないかと考えます。

 

その時に思ったのは、

「こうしたらいいのにな」って思ったことを

「やっちゃえばいいんだ」ってことです。

「これをしたいな」とか

「こうなったら良いな」と思っても、

その後に「でも」って言い訳をつけて結局やらない。

そうじゃなくて、

「これやったら良いよね」って思ったら、

本当にやっちゃうことが良いんだというのは、

実践して思いました。

(P.134~135)

 

まあ、そうですよね。

そりゃそうですよね。

でもできないんですよね。

やりたいことだけやるってのも

弊害はあると思いますし、

でもやりたいものはやったほうがいいですよね。

 

公序良俗に反しないで

人様に迷惑を掛けないレベルなら

やっぱりやってみてもいいんじゃないでしょうか。

 

働いていて楽しくない仕事が、

本当の意味で必要な仕事なのかな、と。

何かが派手に間違ってしまった結果として、

「楽しくない仕事」が存在するのではなのかな、と。

そういう意味では、

組織の歯車になるような仕事は、

たぶん「楽しくない仕事」の代表なんじゃないかと思います。

責任はないけど、楽しくもない。

というより、責任がなければ、楽しいわけがない。

(P.173)

 

おっしゃることはそうだと素直に頷けます。

 

でも世の中には楽しくないけど

絶対に必要な仕事だってありますし、

仕事に楽しみは要らないという人もいますし、

歯車だからダメということもないとも思います。

 

多様性、そして選択肢ではないでしょうか。

楽しみ方も人それぞれですしね。

 

ヨブ記」に種の言葉として、

「わたしは、これを区切って境を定め、

 かんぬきと戸を設けて言った。

 『ここまでは来ても良い。

  しかしこれ以上はいけない。

  あなたの高ぶる波はここでとどまれ』と」

というものがあります。

この「ここでとどまれ」という言葉を託された人たちが

「下り坂」の時代のフロンティアの守護者に

なるのではないかと思うのです。

侵入してくる圧倒的な野生の自然を

一人の人間が踏みとどまって、

フロンティアで生業を営むことで食い止める。

(P.198~199)

 

人と人の関係性もそうでしょうか。

人と自然もそうですね。

人と機械とか、人とテクノロジーとか、

人とシステムとか、人とルールなど

様々なものが該当するような気がします。

 

踏み込み過ぎない。

踏み込まなすぎない。

ちょうど良いバランス、落としどころ。

 

これこそ知性であり、

知恵と言えるかもしれません。

 

やはりこれからの「下り坂」の時代を生きる上では、

時間間隔の転換が重要だと改めて感じます。

一直線に進んでいく時間をゼロにはできないにせよ、

そのスパンを引き伸ばしつつ、

循環する時間の比率を高めていく。

そしてできれば、

循環する時間をメインの時間間隔にしていく。

地方移住、里山構築などにおいても

時間のイメージを転換していくことが

前提になると思います。

(P.218

 

想田さんらしいコメントだと思いました。

時間の使い方は人それぞれだけど

それこそ高度経済成長の頃とは

総体的に異なるということだけは言えるのでしょうね。

 

定常経済を「非現実的」だと

批判する人がよくいますけれど、

定常経済に行き着くことは

もはや歴史的必然だと思います。

もう地球上には資本主義が収奪すべき

資源が残っていないのですから。

エンドレスの経済成長から

定常的な循環への切り替えの時期が来ていると思います。

循環というのは停止のことではありません。

定常経済システムを維持するためには、

それなりに活発な経済活動が必須です。

定常経済のために努力することが

人類全体にとっての

「歴史的ミッション」であるということについては、

若い世代の中には「もう常識」という感性が

育っていると思います。

(P.219)

 

おそらくポイントになるのは

既得権者からいかにして既得権を剝がすのか?

それと戦争をいかに回避するかじゃないでしょうか。

 

戦争が始まると収奪できる資源が表出しますから。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

総合的には大変満足しているのですが

内田さんって対談すると

相手に合わせてしまったりするところがあって、

また相手が変わることにより

いつも述べることをおっしゃる傾向にもあり、

やっぱり内田さんが1人でウンウン唸りながら

書いている本のほうがいいかもしれないと

ちょっと思ってしまいました。

 

それでも内容は考えさせられるところが多く、

まだあんまり内田さんの著書を読み込めていない方には

わりと取っつきやすい内容ではないかと感じました。

 

それでは、また…。

 

 

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