おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
なぜ哲学を学ぶべきなのか?
まあ答えはいろいろあるでしょうけど
そもそもその問い自体や
答えを徹底的に分析するのが哲学ですから
問いや答えに意味があるとは思えません。
いや意味を問うことよりも
意味を見い出すことのほうが大事ですし、
それ意味あるんすか?という問いには
意味があるかないかはお前が決めることだと
つい言いたくなる私としては
こういう禅問答は大好きです(笑)
なぜ哲学を学ぶべきなのか?
学びたいから学ぶんだろう。
学びたくなければ学ばなくていいよ。
そんなところでしょうかね?
ゴチャゴチャにかき混ぜて
「ド」シンプルにするのが
哲学的な生存戦略と言えるのではないでしょうか。
今回ご紹介する書籍は、
【 センスの哲学 】 です。

本書をピックアップした理由
『 センスの哲学 』
千葉 雅也 文芸春秋 を読みました。
今まで千葉雅也氏の書籍は
下記を読んだことがあります。
後者は対談本ですけど
なぜだか気になる若手の哲学家というのが
勝手な私の印象です。
本書はスレッズで紹介している方がおり
お!っと気になって思わずポチりました。
千葉さんがセンスをどう哲学するのか?
楽しみにしながら読み始めた次第です。
目次
第1章 センスとは何か
第2章 リズムとして捉える
第3章 いないいないばあの原理
第4章 意味のリズム
第5章 並べること
第6章 センスと偶然性
第7章 時間と人間
第8章 反復とアンチセンス
付録 芸術と生活をつなぐワーク
読書ガイド
感想
センスとは何か?
これにひと言で答えるのは
なかなか難しそうですし、
語り始めても抽象的になりがちですけど
千葉さんはズバリと
「意味や目的から離れて対象をリズムとして捉えること」と
定義しています。
う~ん、わかったようなわからないような。
センスは生まれつきの才能ではなく、
経験や感覚の積み重ねによって育まれるものですけど
対象を「リズム」として捉える姿勢が重要であり、
意味や目的にとらわれずに
感覚を楽しむことがセンスを磨く鍵らしいです。
これは何が言いたいんだ?
これは何のためなのか?
このように答えを求めることから離れて
そもそもセンス自体が
わりと感覚的なものでもありますから
あまり深く考える必要はないかもしれませんが、
千葉さんは日常生活での価値観のブラッシュアップや
個々が判断力を高めるために
本書を書いたようです。
確かに直感と論理のバランスが
求められる職業では
本書は有用な内容が多いかもしれません。
センスを芸術的な観点から見つつも
哲学的思考として深く問うという点は
他に類を見ない面白い1冊となっています。
それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介いたします。
人間は、他の動物種よりも
自由の余地が大きく、
いろいろなものに関心を向け、
欲望を流動的に変化させることができる存在です。
自由の余地が大きいために、
人間は、
(1 )関心の範囲を「ある狭さ」に限定しないと、
不安定になってしまう。
箇条に多くのことが気になってしまうからです。
(2 )その一方で、未知のものに触れてみたいという
気持ちは誰にでもある。
それもまた、人間の自由ゆえです。
いわば、人間とは「認知が余っている」動物で、
余っているからいろいろ見てみたくなるけれど、
自分を制限しないと落ち着かない、
というジレンマを生きている。
僕はそんなふうに人間を見ています。
(P.23)
認知が余っているという表現は
非常に面白いですね。
人間ならではだけど
人間は本当に面倒くさい生物だなと思うし
人間を深く考えれば考えるほどに
人間をわかるようになるとともに
人間をわからなくなりますね。
ま、それが人間という奴なのですけど(笑)
そうではなく、
自分にできる範囲でのオリジナリティを
まったく別のスタート地点から始めることで、
同じ基準で競争している人たちの
競争に混じらずに、
何らかの別経路でデビューすることが
おそらく可能なんです。
(中略)
センスが悪いと言うと、
能力の問題のように聞こえます。
それに対し、センスが無自覚である、
という言い方をしたのは、
姿勢を変えることで
センスに自覚的になれると言いたかったからです。
モデルはあるにせよ、
再現志向ではなく、
その手前、つまり子供的な手前において、
ヘタウマでいいから自分なりに試してみる。
(P.44~45)
同じ基準で競争している人たちの
競争に混じらない。
これはこれからの時代の
サバイバル戦略として
非常に有効な考え方だと思いました。
またセンスがないではなく
センスに無自覚という言い換えも
諦めの境地から
チャレンジ精神を沸き立たせるものであり
物は考えようなんだなとつくづく思いました。
基本的には生存目的なのでしょう。
しかし、そこではエネルギーが過剰投入されており、
目的を超過し、
合理的な意味から外れて(ナンセンスになり)、
一種の「自動運動」になっているのではないか。
ただ、通常は、あるところでストップします。
ストッパーがかかる。
他の動物と
どのくらい共通性があるのかはわかりませんが、
人間では、興奮が自己目的化するような自動運動が、
奇妙なことに高度に発達している。
ということを、
精神分析などの理論で想定しています。
これを明確に述べたのがフロイトです。
フロイトは、
生存本能だけでは説明できないように思われる、
わざと否定的なことを
繰り返してしまう人間の症状を、
「死の欲動」という概念を考え出すことで、
なんとか説明しようとしました。
(P.153)
人間って
何のために生きているのでしょうね?
という問いを立てること自体が
生物としてはおかしな話なのでしょう。
センスどころの話ではなく
なぜ?という問いこそが哲学ですけど
死の欲動は人間に備えられた
自然かつ宿命的なものなのかもしれません。
基本的には、
生活実感にもとづく意味性と、
特定ジャンルのルールにもとづく
意味性の二つが組み合わさって、
人が「普通」だと思うものが成立しており、
そこからずれると人は拒絶したりする。
そこから、何かを並べたときに、
つながるものとつながらないものがある、
という認識が出てくることになる。
しかし、ここまで説明してきたように、
つながるものとつながらないものがあるという
認識は間違っています。
少なくともそれは、客観的にはない。
つながるかどうかは設定次第なのです。
(P.166)
普通とは何か?
普通でないものは不要なのか?
普通は変化するし
それは認識の問題ではなく
初期設定の問題である。
ふむ、つまり設計段階が
最も重要なのでしょうね。
これはひとつのライフハックで、
何かをやるときには、
実力がまだ足りないという
足りなさに注目するのではなく、
「とりあえずの手持ちの技術と、
自分から湧いてくる偶然性で
何ができるか?」と考える。
規範に従って、
よりレベルの高いものをと努力することも大事ですが、
それに執着していたら人生が終わってしまいます。
人生は有限です。
いつかの時点で、「これで行くんだ」と決める。
というか諦めるしかない。
(P.183)
確かにこれは人生戦略としても
キャリア戦略としても
実に大事で有効な考え方です。
どこかにバラ色の世界があると
永遠の旅人をしていたら
あっという間に中高年になりますからね。
取りあえずで決めてみる。
仮でいいから設定する。
話はそこからしか始まらないし
それができるのが大人ってもんじゃないかな。
人間は、他の動物に比べて、
非常に大きく可能性を余らせている存在であり、
だから遅延を生きている一方で、
やはり動物なので、
目的を最短で達成しようとする傾向もある。
この二つが綱引きをする。
さっさと目的達成ができることが快である面もあり、
他方で、まさに人間らしさとして、
途中でまごまごすること、
サスペンスを楽しむ面もある。
サスペンスは不安、不快でありながら面白い。
(P.197)
実に面白い考察ですね。
可能性を余らせている。
私たちはそれを自覚しているでしょうか?
自覚すればもっと人生を楽しめるかもしれない。
足るを知る者は富む。
足りないと思っているから
おかしな焦燥感や無用な感情が先走り
自らでつまらない日々に
してしまっているのかもしれないなぁ。
センスの洗練がすべてではない。
野暮ったいというか、
不快すら引き起こすものが
人を惹きつけてやまないことは
周知の事実だと思います。
装飾と機能性ということで言えば、
装飾を抑える、ほどほどにするほうが
(近現代のデザインでは)洗練ですが、
ある種のテンプレ的な装飾を過剰化することが
大衆文化らしさだったりするわけです。
(中略)
人間の魅力というのもそうかもしれません。
バランスがとれた良い人というだけでは魅力にかける、
というのはよく言われる話で、
どこか欠陥や破綻がある人にこそ
惹きつけられてしまうことがある。
その破綻というのは、
その人固有のものというより、
「ある種のテンプレのその人なりの表現」だったりする。
固有の人生がなぜか典型的な破綻に取り憑かれてしまう
人間という存在の愚かさが、
人をそこへ巻き込む悪魔的魅力となる。
(P.213~214)
う~ん、人間観察というか
人間の本質に斬り込んでいて
大変に興味深く感じました。
私たちは私たち自身のことを
あまりにもわかってない。
でもそれを前提に物事を考えれば
意外とわかることは多い。
どう生きるかは個々それぞれの選択だけれども
どう生きるべきかは
歴史を学べば、哲学的に身に付くのかもしれません。
評価
おススメ度は ★★★★☆ といたします。
センスという観点を通じて
芸術論を学ぶ。
そして芸術を通じて
人生を学ぶ。
示唆に富んだ価値ある1冊です。
本書はわかりやすさを追求して
その分だけ読みやすく、理解しやすいけれど
あえてもっと難解に
哲学的な深掘りをしても良い気がしました。
そこが星がひとつ欠けた理由ですけど
そうは言っても読む価値のある内容です。
それでは、また…。
<ジーネットが発信する情報提供サイトはこちらです!>
・ジーネット株式会社 公式ホームページ
・医療ビジネス健全化協議会<IBIKEN>ドクター向け情報提供サイト
・ジーネット株式会社 <社長のtwitter>
・ジーネット株式会社 <社長のfacebookページ>
