ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

ホッブズ リヴァイアサンの哲学者

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

いつの時代も

そうは変らないのかもしれませんけど

現代社会は難しいなと思うことが

しばしばあります。

 

我が国は高度経済成長という

世界に誇れる発展をしてきただけに、

私はギリギリその世代に引っ掛かっているだけに

現代の難しさをより感じるのかもしれません。

 

何をどう考えるべきか?

考えるとはいったい何か?

 

学問としての哲学は

あまりにも難解ですけど

哲学的なアプローチは

ある程度できないと

自分自身が辛くなる気もします。

 

当ブログでは

今までも何度か哲学本をご紹介してきました。

 

ka162701.hatenablog.com

 

これからもしっかり学んでおきたい領域です。

 

今回ご紹介する書籍は、

ホッブズ リヴァイアサンの哲学者 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

ホッブズ リヴァイアサンの哲学者 』

田中 浩 岩波新書 を読みました。

 

どうして本書に興味を持ったのか?

自分でもよくわかりません。

 

ホッブズという方は

名前くらいは聞いたことがあるという程度ですし、

リヴァイアサンと言われても

そんな映画があったかな?というレベルです。

 

もちろんホッブズという哲学家の代表作が

リヴァイアサンであることくらいは知ってますけど

ただ知ってるだけで詳しくはありません。

 

自分自身、哲学については

学びたい、学んだほうがいいだろう、

学ばねばならないという考えは持っていますから

深層心理的に反応したのかもしれません。

 

ま、これもご縁かと思い、

どんなものかと手に取った次第です。

 

目次

第1章 危機の時代の申し子、ホッブズ

第2章 ホッブズ政治学の確立

第3章 近代国家論の生誕

第4章 『リヴァイアサン』の後衛戦

第5章 近代政治思想史上におけるホッブズの意義

 

感想

本書はいいです。

私のように事前知識がない人間でも

実にわかりやすかったです。

 

これ著者の田中さんの功績と言っていいですけど

時代背景から始まり、

こういう順序で学ぶとわかるよね?というように

とても丁寧な説明と構成になっています。

 

ホッブズの人となりや

根本的な思想に至る人生の過ごし方、

影響を受けた同時期に生きた人々や

当時のイギリス社会の様子などが

手に取るように理解できました。

 

そのためか、

ホッブズの代表作と言われる

物体論、人間論、市民論を通して

傑作とも言われるリヴァイアサンに至る過程が

よくわかりました。

 

やはり作品を学ぶためには

その過程が重要なんですね。

 

なぜ、どうしてという背景がわかると

代表作が生まれた理由がわかります。

 

正直、本書はホッブズの著書に関しては

詳細の内容までは書かれていませんので

概要しかわかりません。

 

しかしそれでいいんだなと思いました。

私はリヴァイアサンを読みたくなりました。

 

今度は多少なりとも事前知識がありますので

きっと学びは深くなることでしょう。

 

いつになるかはわかりませんが、

すでにポチっとしましたので

そのうちに読もうと思ってます。

 

さてさて…

話しを戻しまして

恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。

 

ホッブズは、

政治学や国家論を論じるさいに

「人間」を中心に置いている。

それまでの政治学では、

「ポリス」や「家族」からその論をはじめていた。

ホッブズはなぜ「人間」からはじめたかというと、

それは国王側にも議会側にもくみせず論じるためには、

「人間」という立場

ー王党派も議会派も人間という点では変わりはないー

から論じるほかなかったからである。

(P.34)

 

人間中心って

ごく当たり前のことだと思うんですけど

よくよく考えてみれば

ホッブズの生きていた時代から

500年近く経っているのですが、

今だに人間中心にはなっていないどころか、

イチ時期よりも悪化している感すらあります。

 

政治って人間を見失ったら

一切、機能しないんじゃないでしょうか?

 

そう考えると人類は進化していませんし、

むしろ思想的には退化しているのかもしれません…。

 

哲学の世界ではデカルトが、

方法序説』において

「われ思う故にわれあり」と述べたことによって、

またカントが、

認識の主体は人間にあると主張したことによって、

二人は人間の主体性を主張した近代最初の哲学者といわれるが、

ホッブズこそが、

近代において「運動論」と「認識論」を組み合わせて

人間の主体性を主張した最初の人ではないのか。

当時は「人間」は「神のまえ」では

「神の似姿」とされ、

社会や国家における主体とは考えられていなかった。

とすればホッブズが人間を政治学考察の出発点とした

意味はきわめて大きい。

しかし人間を運動体として説明したことによって、

ホッブズ唯物論者・無神論者として

あらゆる方面から非難攻撃される

デカルト無神論者といわれたーこととなった。

(P.39~40)

 

こういうふうに書いてくれると

理解度が高まりますね。

 

一応、デカルトもカントも読んでいるんですけど

この文章を読んで、なるほど…と思いました。

 

これにたいしてホッブズは、

新政府への帰順に苦しんでいた王党派の人びとに

「生命の安全」(自己保存)のためには

「現実の政府」に帰順することもよしとする

理論を提供したのだ。

(中略)

亡命第一号だったことといい、

早々と新政府への帰順を決断したことといい、

ホッブズは「恐怖との双子」どころか

「勇気ある人物」だったといえないだろうか。

(P.65)

 

ホッブズは生命の安全を重視していますが、

そのわりにはファイターというか

武闘派というか、

恐れ知らずなところがあります。

 

そういう人だからこそ

これだけ語り継がれる存在になれたのでしょうか。

 

ホッブズ政治学の基本的枠組みは、

革命がはじまる以前から定まっていたということであろう。

では、その基本的枠組みとはなにか。

それは「政治の世界」を考察するばあいにもっとも重要な、

どうすれば「人間の生命の安全を守ることができるか」という観点から、

ホッブズはその政治学が考えていたということである。

多くの人びとはピューリタン革命の嵐の中で

右に左に揺れ動いた。

しかし、ホッブズの政治姿勢は一貫して

ゆるぎないものであった。

それが可能だった理由は、

かれが「生命の安全」(自己保存)という観点からのみ

政治をみつめ、

その解決策を考えていたからである。

(P.90~91)

 

今の日本の政治家たちって

ホッブズとか読んでいるんだろうか?

 

ついそんなことを考えてしまいましたが、

たぶん読んでない人は多いのでしょうね。

 

基本的枠組み。

 

そこが確立していないと

表面的で表層的な人気取りという

軽薄な政治になってしまいますよね。

 

ハリントンは大貴族の出でありながら、

もはや「王政」はいらない、

「民主政」でなければならないと主張し、

1656年に『オシアナ』を書いて

クロムウェルの独裁」にも反対している。

かれはギリシャ時代の「くじ引き」「交代制」を

柱にする政治制度と、

イングランドを150の地区に分けて、

財産資格を無くした「セネート」(上院)と

「ピープル」(下院)による二院制の代表制を提案している。

ここで重要なのは、

「くじ引き」によって代表が選出され、

二年に一度交代し、

再度代表になることはできないという

徹底した交代制度によって、

権力の専制化を防ぐ方法を提案している点である。

これは、政治学でいえば

「政治原理論」と並んで重要とされる

「政治制度論」で、「制度」によって

権力を抑制するという考え方である。

(P.130~131)

 

これは第5章で

近代政治思想史上におけるホッブズの意義の中から

ハリントンという貴族の章からの抜粋ですが、

「くじ引き」と「交代制」に惹かれました。

 

日本もこれで良くね?と思ったわけですが、

もうホント革命でも起きないと

変わらないところまで硬直化してますよね。

 

しかも何かひとつやふたつを変えたところで

大した効果は出ないレベルですし、

もう何もかもを変えなきゃいけない。

 

でもそれがいいとも思えないのですね。

 

しかし万が一にでも

この「くじ引き」と「交代制」を導入すれば

それだけでも有効な変化が現れるような気がしました。

実際のところはわかりませんけど…。

 

しかし、民主主義の遅れた国では

「危機回避」のためという理由で

いったん権力が集中されれば、

その独裁的権力は永続的なものとなる。

ドイツの「ナチス独裁」、

日本の「軍部独裁」、

ソ連の「スターリン独裁」

(これはマルクスの「プロレタリア独裁論」を利用したものだが、

 マルクスエンゲルスは「社会主義革命」が成功するまでと

 期限をつけていた点に注意せよ)などがその例である。

(P.149)

 

制度や仕組みが社会を創る。

果たして今の日本は民主主義が確立されたのだろうか?

むしろ自民党独裁の道に走っていないでしょうか?

 

では、どうすればよいのか。

それは、ホッブズが述べているように、

各国が全力をあげて平和を守るために

「武器」を放棄する以外にないのである。

その意味で民主主義とは

「永続的思想革命」への努力である。

われわれは「人間」にとって最高の価値は、

「生命の安全」(自己保存)にあることの意味を説いた

ホッブズの思想を学習する必要があろう。

(P.159~160)

 

突き詰めれば思想であり哲学ですね。

ここから出発しないと

人類は自ら滅亡への道を歩むかもしれません。

 

今だけカネだけ自分だけ。

全世界的に進んでいる嫌な風潮ですね…。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

私などが言うのもおこがましいですが、

とても出来の良い本であると思いました。

 

事実、私自身の中で

ホッブズリヴァイアサンに対しての興味が

爆上がりしちゃいました。

 

こういう次に繋がる展開って

ワクワクしますね~。

 

それでは、また…。

 

 

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