おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
10年後にどうなっていたいか?
そのために何をするべきか?
キャリア観、人生観というものが
強く、そして深く問われる時代だと思います。
しかし、学校で習うようなものでもなく、
10歳上の先輩たちとは価値観が合わず、
誰かに教わるとか、頼るわけにはいかないのですね。
そもそも正解があるものなのか?
「哲学」が必要な時代と言えるかもしれません。
今回ご紹介する書籍は、
【 武器になる哲学
人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50 】 です。

本書をピックアップした理由
『 武器になる哲学
人生を生き抜くための哲学・思想のキーコンセプト50』
山口 周 KADOKAWA を読みました。
山口さんの著書は
下記を読んだことがあります。
好印象を持っていますので、
そろそろ他の本を読みたいと思っていたのです。
山口さんの著書をざっと確認してみると
いろいろ興味深い本がありまして、
私の心に刺さったのが本書でした。
哲学を武器にする。
これはキャリアという観点でも、
人生論としても必要だと思います。
めちゃくちゃ楽しみにしながら
読み始めた次第です。
目次
プロローグ
ー無教養なビジネスパーソンは「危険な存在」である
第1部 哲学ほど有用な「道具」はない
・なぜビジネスパーソンが「哲学」を学ぶべきなのか?
・本書といわゆる「哲学入門」の違い
・なぜ、哲学に挫折するのか?
第2部 知的戦闘力を最大化する50のキーコンセプト
第1章 「人」に関するキーコンセプト
ー「なぜ、この人はこんなことをするのか」を考えるために
第2章 「組織」に関するキーコンセプト
ー「なぜ、この組織は変われないのか」を考えるために
第3章 「社会」に関するキーコンセプト
ー「いま、何が起きているのか」を理解するために
第4章 「思考」に関するキーコンセプト
ーよくある「思考の落とし穴」に落ちないために
ビジネスパーソンのための哲学ブックガイド
感想
とても勉強になりました。
最初の第1部を読んでいて、
ああ、この本は大当たりだと感じました。
哲学を哲学していないというか
哲学を哲学の常識から切り離して、
スクラップ&ビルドしています。
結果的には、
非常にわかりやすい哲学に仕上げているのです。
こんなに読みやすくて、
わかりやすい哲学本はそう滅多にありません。
頭にスルスルと沁み込んでくる哲学本です。
哲学に興味はあるけど、
何だか難しそうで手が出ないような人には
超絶おすすめいたします。
それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。
イノベーションに関する論考では、
よく「常識を捨てろ」とか「常識を疑え」といった
安易な指摘がなされますが、
そのような指摘には
「なぜ世の中に常識というものが生まれ、
それが根強く動かし難いものになっているのか」という
論点についての洞察がまったく欠けています。
「常識を疑う」という行為には
実はとてもコストがかかるわけです。
一方で、イノベーションを駆動するには
「常識への疑問」がどうしても必要になり、
ここにパラドクスが生まれます。
結論から言えば、
このパラドクスを解く鍵は一つしかありません。
重要なのは、よく言われるような「常識を疑う」という
態度を身につけるということではなく、
「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を
見極める選球眼を持つということです。
そしてこの選球眼を与えてくれるのが、
空間軸・時間軸での知識の広がり=教養だということです。
(P.16)
本書のテーマは、
「ビジネスパーソンも哲学を学ぶべき」であり、
哲学をビジネスの武器にしようということです。
この箇所は本書のプロローグに書かれているのですけど、
すでに私はここで引き込まれました。
これからのマネジメント層や、経営層には
「哲学」は必須の教養と言えるかもしれません。
人の行動を本当の意味で変えさせようと思うのであれば、
「説得より納得、納得よりは共感」が求められます。
論理思考に優れたコンサルタントが
往々にして事業会社に移ってから苦戦するのは、
論理によって人が動くと誤解しているからです。
(P.58)
一応、私もコンサルタントの端くれですので、
この文章にはピンときました。
人はエモーショナルで動きますから、
ロジックだけで詰めても効果的ではありません。
自分の努力に対して
正確に相関する報酬を受け取れる。
そういうわかりやすいシステムであれば、
人間はよく働く。
そう思っている人がすごく多い。
雇用問題の本を読むと
だいたいそう書いてある。
でも僕は、それは違うと思う。
労働と報酬が正確に数値的に相関したら、
人間は働きませんよ。
何の驚きも何の喜びもないですもん。
(P.69)
これは私の敬愛する内田樹さんの言葉であり、
本書で紹介してくれているのを嬉しく思いました。
これは「視座」の問題であり、
視点が低く、視野が狭いと、
自己主張しかできません。
しかし、組織は自己主張をぶつけ合うだけでは
円滑には回りません。
誰かが、それをまとめあげねばなりませんが、
まとめたくない人の主張を取り上げても
やはりうまくは回りません。
なぜ、高価な代償を払って獲得した
「自由の果実」を味わった近代人が、
あれほどまでに熱狂したのか。
「鋭い考察」は
いつも「鋭い問い」から生まれます。
(中略)
自由であることには
耐え難い孤独と痛烈な責任を伴う。
(P.88~89)
目の前の出来事に翻弄されるようでは
とても「問う」ことはできません。
今でも人間というのは愚かなものだと思います。
歴史は繰り返すと言われますが、
このままではまた大きな戦争が起こりかねません。
真の知性を持つ人が
社会のリーダー層に上がることを期待します。
いわゆる「成功」というのは、
社会の組織の命じるままに行動し、
期待された成果を上げることを意味しますが、
サルトルは
「そんなものはなんら重要でない」と断定します。
自由であるということは、
社会や組織が望ましいと考えるものを
手に入れることではなく、
選択するということを自分自身で決定することだ。
(P.100)
主導権を譲り渡すか、
自分が持ち続けるか。
たったこれだけで人生は大きく異なりますね。
個人的には
他者に翻弄される人生なんて
クソくらえだと思いますけど、
他の世界を知らないと巻き込まれます。
悪とは、
システムを無批判に受け入れることである。
(P.103)
組織は人を壊します。
誰のためにもならなくても
組織という幻想に人は絡めとられますから。
自分は洗脳されていないか?
時々、振り返ることも必要でしょうか。
人が創造性を発揮して
リスクを冒すためには
「アメ」も「ムチ」も有効ではなく、
そのような挑戦が許される
風土が必要だということであり、
更にそのような風土の中で
人が敢えてリスクを冒すのは
「アメ」が欲しいからではなく、
「ムチ」が怖いからでもなく、
ただ単に「自分」がそうしたいから」
ということです。
(P.142)
この前後の文章は非常に興味深かったです。
人は「お金」に振り回されて、翻弄される。
その結果、本来持っていた崇高な目的を見失い、
有能なスキルをお金稼ぎに転化する。
カネ、カネ、カネという先にあるのは
本人と組織の破滅と言えるかもしれません。
「今だけカネだけ自分だけ」からの脱却が
人を正常化させるということでしょうか。
キャリアや人生の「転機」というのは
単に「何かが始まる」ということではなく、
むしろ「何かが終わる」時期なのだ、ということです。
逆に言えば「何かが終わる」ことで初めて
「何かが始まる」とも言えるわけですが、
多くの人は、後者の「開始」ばかりに注目していて、
一体何が終わったのか、
何を終わらせるのかという「終焉の問い」に
しっかりと向き合わないのです。
(P.166)
この箇所は、
一応キャリアの専門家の端くれでもある私にとって
とても示唆に富むものでした。
私はよく「引退から逆算する」という
「終わる」から「始まる」のであって
「始める」ために「終える」のは
ケースバイケースではありますが、
時に順序が違うこともありそうです。
なぜなら不測の事態というのは
私たちのキャリアや人生において
必ずついて回るものですから、
起きてしまったことに対して
柔軟かつスピーディーに対応する能力は
あったほうがいいのだろうなと思う次第です。
ある人にとって「これが答えだ」とされるものが、
決して「他者」にとってのそれではないからです。
連綿と「提案」と「否定」が続く、
永遠に「完全な合意」に至らないかのように思える、
この営みが、「わかりあえない存在」としての
「他者」の存在の浮上につながったのでしょう。
(中略)
それでもなお、レヴィナスは「他者」の重要性と
可能性について論じ続けています。
ううむ、そのようなよそよそしい相手、
わかりあえない「他者」が、なぜ重要なのか。
レヴィナスの答えは非常にシンプルです。
それは、「他者とは”気づき”の契機である」というものです。
(P.178)
レヴィナスの他者論を
まさに一刀両断した感じですね。
でも、ここまで砕いてくれると
誰でもわかる。
著者の腕の見せ所ですが、
本書の存在価値はこの一刀両断にあります。
すごい。
私たちは自分たちの組織なりキャリアなりを、
なるべく「頑強」なものにするという
「成功イメージ」を持ちます。
しかし、これだけ予測が難しく、
不確実性の高い社会では、
一見すると「頑強」に見えるシステムが、
実は大変脆弱であったことが
明らかになりつつあります。
自分の所属する組織にしてもキャリアにしても、
いかに「反脆弱性」を盛り込むかは、
大きな論点になってくると思います。
(P.208)
一応、キャリアの専門家である私としては
ここは大変気になりました。
そして、「頑強」ならばまだいいですが、
「損得」になっている人が多くて
それが結果的に、中長期的には
「大損」になっているケースも少なくありません。
嫌でも明日はやってきます。
未来のために今どう動くべきか?
これがキャリア思考の第一歩です。
環境により適合したものが生き残るという
自然淘汰のメカニズムにおいて、
最大の鍵になるのは
「適応力の差は突然変異によって偶発的に生み出される」
という点でしょう。
突然変異という非予定調和な変化が、
適応力の差を生み出すということは
なかなか示唆深い。
というのも、この考え方は一種のエラーを起こすことを
前提としているからです。
(中略)
自然界において、
適応能力の差分は計画や意図によるものではなく、
一種の偶然によって生まれているのだということを知れば、
組織運営や社会運営においても、
私たちはそれを計画的・意図的に
より良いものに変えていけるのだという
傲慢な考えを改め、
自分の意図よりもむしろ「ポジティブな偶然」を
生み出す仕組みを作ることに
注力したほうがいいのかも知れません。
(P.236・238)
謙虚さを失い、
自然をも人間の都合で
強引に犠牲にしてしまう。
そして自分の首を自分で絞めるように
結果的には自分たちが被害に遭う。
お偉くなると傲慢になり、
自分のすることは何でも許されると思ってしまう。
歴史を振り返れば、
こういう時に必ず人類は痛い目に遭っています。
もう自戒しませんかね?
ここで重要なのは
「意味の幅が違う」という指摘です。
つまり、ある言葉が概念として指し示す範囲が、
文化圏によって違うということを
言っているわけです。
(P.317)
何てことのない文章ですが、
実は相当に重要なポイントのように感じました。
本書では、日本とフランスの
文化の違いを取り上げていますが、
そんなに大きな話ではなくとも
それこそ自分と相手という身近な人でも
「意味の幅が違う」ことで
相互理解に及ばないことは少なくなく、
気をつけねばならないなと思った次第です。
未来の世界の景色は、
いまこの瞬間から未来までのあいだに行われる
人々の営みによって決定されることになります。
であれば本当に考えなければならないのは、
「未来はどうなりますか?」という問いではなく、
「未来をどうしたいのか?」という問いであるべきでしょう。
(P.348)
素直にその通りだなと思いました。
主導権を握るというのは
こういうことですよね。
周りに流されない。
自分でつくる。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
哲学に興味があっても
なかなかとっつきにくくて、
せっかくチャレンジしても
残念ながら跳ね返されてしまって
興味を失ってしまった方は
わりと多いのではないかと思うんです。
そんな方には是非本書を手に取って欲しいです。
よい意味で哲学を壊してくれて、
内包されている本質だけを抽出してくれます。
逆に本書を読めば、
難解な哲学を学ぶ意欲が湧いてくるかもしれません。
私にとっても
人生の中で分岐点となりそうな
素晴らしい学びが手に入りました。
それでは、また…。
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