ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

医者が病院から逃げ出すとき

 

おはようございます。

 

医師、看護師の人生の転機でお役に立つ

転職・開業コンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

「医者が病院から逃げ出すとき」

筑摩書房 米山公啓 を読みました。

 

医師転職逃亡

 

正直タイトルと内容が

マッチしないような気がしましたが、

医療を理解する為には

非常に良い本だと感じました。

 

まずは目次ですが、

 

第1章 果てなく続く病院崩壊

第2章 病院評価の難しさ

第3章 診察室の算盤勘定

第4章 医療は健康の敵である?!

第5章 一寸先の医療を考える

 

となっています。

 

そして本の宣伝は、

【かつて、国によって

「医者余り」が喧伝されたことをご記憶だろうか。

 

 そのわずか数年後、

 厚労省は「医者が足りない」と手の平を返した。

 

 この変節はなぜ起きたのか?

 その元凶は医療政策にある。

 厚労省がすすめた医療費抑制と医局改革のために、

 最前線の医者たちが現場から逃げ出したのだ。

 

 残された勤務医たちの就労環境は苛烈を極め、

 いま、日本の病院は崩壊の危機に瀕している―。

 医学界とのしがらみを捨て去った医学博士が、

 臨床現場の視点から

 日本の医療制度の限界を報告する。】

となっています。

 

著者が日々医療に対して感じている事を

エッセイのような形で書いた、

この本ですが、

非常に良い問題提起をされているように感じました。

 

と言うのも、

とても視野が広く、

そして、それぞれの立場になりきって書かれている点が

秀逸だなと思いました。

 

著者は医師でもありますので、

医療者の代弁者にもなっています。

 

また日々接する患者側の立場に立って

患者の代弁者にもなっています。

 

医療機器メーカーや

製薬会社の立場にも立てていますし、

政治や官僚の側の視点も持っています。

 

あるひとつの事象を様々な角度から、

多様な立場の思いを代弁できている点が

この本の良さであり、

著者の凄さなのかなと感じました。

 

素人にも大変にわかりやすいですし、

著者のポジショニングが

非常にニュートラルな為に、

どの立場の人が読んでも

ある程度の共感を覚えるのではないかと思います。

 

そして、

<医学の常識は、ある時期になると、

 まったく変わってしまう。

 これも「医学の常識」かもしれない。>

とも述べております。

 

これなど著者の客観性と本質を

理解している事の証明でもあるかと思います。

 

最後にそれぞれのエッセイのタイトルが

非常に興味深いので、

いくつかご紹介しておきますね。

 

高齢化社会が医療費を押し上げるという嘘

・だれが医療で儲けているのか?

・巨視的に救急医療を整備せよ

・のんびり診療が患者を救う

・病院ランキングは信用できない

・ゴッドハンドはいらない

・高齢者医療には愉楽が欠けている

特定健診は医療費を抑制しない

・医療へのアクセスがよすぎることも問題だ

・健康診断は壮大な無駄である

・医者の給料格差はあって然るべき

・大病を患ってから禁煙では遅すぎる

・医者も薬もないに越したことはない

・健康好きにもほどがある

・医療番組に絶句した

・次なる課題は医学部統廃合

・医師派遣の効果はいかに

・大学病院も広報が大切だ

・臨床への回帰を急げ

・研究者は特許取得を目指せ

 

いかがでしょうか?

 

中には賛否両論があり

喧々諤々な議論になるものもあるでしょうし

私達患者側の常識が間違いであるというものもあります。

 

そういったものも含めて

実に面白い本でした。

 

お奨め度 ★★★★☆ とさせて頂きます。

 

それでは、また…。

 

 

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