ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

失敗の本質 日本軍の組織論的研究

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

世に失敗学は多いですし、

格言やことわざにも

失敗について触れられているものは多いですね。

 

私自身、何てたって失敗の多い人間ですから

失敗から学ぶことは多いですし、

意識的に失敗論については

吸収しようという気持ちが強いです。

 

今はスマホタブレット、パソコンなど

デジタルで記録することがほとんどですけど、

かつては私も紙の手帳を使っていました。

 

時々今でも振り返るのですが、

その手帳にはビッシリと格言やことわざがメモしてあり、

かなり失敗について書かれているものが多いのです。

 

ああ、自分はこの頃から

失敗について相当に意識していたんだなと

微笑ましく思っています。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 失敗の本質 日本軍の組織論的研究 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 失敗の本質 日本軍の組織論的研究 』

戸部 良一 寺本 義也 鎌田 伸一

杉之尾 孝生 村井 友秀 野中 郁次郎 

中公文庫 を読みました。

 

すでに時代は令和になり、

戦争を知る世代は少なくなるばかりですね。

 

私自身も当然知識としてしか戦争を知らず、

夏場にテレビで特番などが組まれると

あえて見るようにしています。

 

ただ大学生の頃でしたでしょうか?

20代前半だったと思うのですが、

メチャクチャ戦争についての書籍を

読んだことを覚えています。

 

日本のものだけでなく、

第一次世界大戦第二次世界大戦

ドイツやロシアやイギリスやフランスなど

世界各国の戦争についての本を読み漁りました。

 

別に戦争オタクではありませんし、

戦略・戦術に興味があったわけでもなく、

航空機や戦車や軍艦に関心もありません。

 

どちらかと言えば

歴史的な興味としての

アプローチだったように思いますが、

なぜだか貪るように読んでいました。

 

お陰様で知識はかなり付きましたし、

若い時分なりの学びはあったように思います。

 

そこで本書です。

失敗の本質を研究する。

 

う~ん、興味深いです。

戦史としてではなく、

失敗学として面白そうと思ったんです。

 

Amazonだったか、楽天だったか忘れましたが、

なぜかおススメに何度か出てきて

正直、買うかどうか悩んだのですけど、

気になるということは

読めという神のお告げかもしれないと考えて

ポチっとしました。

 

プロフェッショナルとは

あらゆる失敗を知っている人間のことだ。

 

以前、こんな言葉とも出会ったこともあり、

失敗は数多く知るべきだし、

我が国では最大の失敗とも言えますから

しっかり勉強しようと思って読み始めたのでした。

 

目次

序章 日本軍の失敗から何を学ぶか

 

1章 失敗の事例研究

 1 ノモンハン事件ーー失敗の序曲

 2 ミッドウェー作戦ーー海戦のターニング・ポイント

 3 ガダルカナル作戦ーー陸戦のターニング・ポイント

 4 インパール作戦ーー賭の失敗

 5 レイテ海戦ーー自己認識の失敗

 6 沖縄戦ーー終局段階での失敗

 

2章 失敗の本質

  --戦略・組織における日本軍の失敗の分析

 六つの作戦に共通する性格

 戦略上の失敗要因分析

 組織上の失敗要因分析

 要約

 

3章 失敗の教訓

  --日本軍の失敗の本質と今日的課題

 軍事組織の環境適応

 日本軍の環境適応

 自己革新組織の原則と日本軍の失敗

 日本軍の失敗の本質とその連続性

 

感想

う~ん、面白い。

面白いなんて言ったら

語弊があるかもしれませんけど、

負け戦になった理由がよくわかります。

 

まあ結果論とも言えますが、

これじゃ勝ち目がないよね?と素直に思えますね。

 

実際に完膚なきまでに叩き潰されたのですし、

敗因も今まで散々語り尽くされてきたとは思いますが、

それでも今振り返る価値は

とてつもなく大きいと思われます。

 

本書の初版が発行されたのは1991年8月です。

その後、56回もの重版を重ねてきており

私が購入したのは2016年6月に発行されたものです。

 

これだけ長く、広く、読まれてきたことは

とんでもなくスゴイことではないでしょうか?

 

著者自身たちも反響の大きさに驚き、

当惑してもいるそうです。

 

逆に言えば私たち日本人にとって

とても関心の高い分野であるとも言えるのでしょうか。

 

本書は、ノモンハンに始まり、

ミッドウェー、ガダルカナルインパール

レイテ、沖縄と6つの戦いについて

具体的な説明をしたあとで、

失敗の本質、失敗の教訓に切り込んでいくわけですが、

この流れもわかりやすくてよかったです。

 

あくまでも本書では

日本軍の作戦に関しての研究であり、

組織や戦略についてが中心で

当時の政治や社会には踏み込んでいません。

 

ですから純粋に戦争や作戦に関する

失敗学として学ぶことができます。

 

また本書の執筆陣は

戦史の専門家ではなく、

(もちろん専門家から学んではいますが)

組織論などの専門家である点もユニークです。

 

大東亜戦争について書かれた書籍のなかには

あまりにも軍事に精通し過ぎていて

軍事オタクでないと意味がわからないような

深いところまで追求するものが少なくありませんが、

その点、本書では一般人でも充分理解できる

内容となっているところが助かりました。

 

失敗の内容や

なぜ負けたのか?については

ネタバレになりますので

あまり深く書きませんが、

私が本書を読んでいて

最も感じたのは…

「今も一緒じゃん」

「令和の時代になっても変わってないじゃん」

ということです。

 

組織的な構造や構図、

根底に流れる伝統や文化、

そういった点では現代社会にも

脈々と引き継がれてしまっているのですね。

 

もちろん個々や個別の組織では

改善できて上手く行っているところもあるでしょうが、

何だかこの国の、我々日本人の

根本的な欠点とか短所の問題なんだなということを痛感しました。

 

本書ではそれを自己革新能力の欠如としていますが

まさにそこですね。

 

成功体験を引きずり、

より良い形に組織を変えられないために

必然的に起きてしまう失敗。

 

それを明確に浮き出させた点が

本書の最大の価値なのかなと感じます。

 

失敗なんて

誰もしたくはないですけど、

失敗のない組織なんて

やはり存在はしないのだと思うのです。

 

いかに失敗を糧にして

常に組織を刷新していくのが必要であり、

それができない組織は

国家でも、軍でも、企業でも、

どんな組織でもいずれ失敗に陥るのではないでしょうか。

 

そう考えていくと

現代日本の抱える問題は

自己革新能力の欠如により起きているとも思え、

このままでは経済的にも社会的にも

かなりの窮地に陥る恐れがあり、

いやもうすでに相当の失敗をしているとも言え、

個人的には大きな危機感を感じます。

 

本書から、また敗戦から

現代を生きる私たちも学ぶことは多く、

それを具体的に実行し、

早く失敗への転落を防がねばならない。

 

そんなことを考えさせてくれた良書です。

 

私個人としても

小さな組織を率いていることもあり、

組織の失敗に関しては

大変に興味がありますから

本書での学びを自分の組織に活かしたいですし、

また活かしていかねば

近い内に失敗に陥る可能性もありますので

そこは冷静に受け止めて

自省的な策を練っていきたいと思いました。

 

後々振り返れば、

これがマズいよね、

ここがポイントだったねということは

いくらでも言えるのでしょうけど

それを本当の学びにしていかないと

知らず知らずのうちにドツボにハマってしまうのでしょう。

 

成功は自分の見えるところで

徐々に育っていくものです。

 

逆に失敗は見えないところから

突然やってくるものとも言えますよね。

 

必要以上に失敗を恐れて

結果的に何もしなかった…なんてなると

それは失敗を大きくしてしまいますが、

失敗がやってこないように事前に手を打ち、

万が一降り掛かってきても

火の粉を払うような準備はできなくないと思うんです。

 

そのためにも組織の失敗とは何ぞや?

どういう組織は失敗しがちなのか?

こんな「失敗の本質」を知っておくことは

組織においては必要不可欠なのかもしれません。

 

いやそれだけでなく、

私たち個人個人も、

キャリアや人生という面でも

「失敗の本質」は手にしておくべきですね。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

あくまでも私の個人的見解ですが、

日本人にもできる人はいますし、

世界で活躍できるくらいの能力の高い人は

結構存在するのですね。

 

ただ日本ではできないんです。

世界に飛び出さないとできないんです。

 

できることならば

日本にいながらも

世界に通用する人が増えて欲しいですけど

それは相当に難しいのですね。

 

おそらくこれがこの国の持つ最大の欠点であり、

大東亜戦争での敗北の決定的要因であり、

それは現代でもまた繰り返されようとしています。

 

あの当時も日清戦争日露戦争で勝利し、

第一次世界大戦でも勝者側に付いたことで

一瞬は成功者の仲間入りをしました。

 

しかし同時に失敗への道を

走り始めてしまっていたのですよね。

 

現代も、長く続いた高度経済成長で

先進国の仲間入りをしました。

 

しかし同時に失敗への道を

走り始めてしまっているのです。

 

成功は次の失敗へのプロセスですね。

 

本書の最後は、

「日本的企業組織も、

 新たな環境変化に対応するために、

 自己革新能力を創造できるかどうかが

 問われているのである」とまとめていますが、

これは別に企業に限ったことではなく、

政治でも、行政でも、あらゆる組織に言えることで

すでに自己革新能力を創造できておらず、

昔の成功にしがみつき

新たな戦略を手に入れられていませんよね。

 

歴史は繰り返すと言われるように

私たちは今、敗戦への道を歩んでいるのかもしれません。

 

まさに失敗の本質を学ぶべきですし、

早急の対処が必要と思います。

いや、もう遅きに失しているとも言えますが。

 

それでは、また…。

 

 

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