ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

ライフワークの思想

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

あなたにとって

人生を賭けてすべき仕事って

どんなものでしょうか?

 

それはね…と

即答できる人は

そんなにいないと思うんですよね。

 

私たち日本人は

右肩上がりの経済成長を経験したことにより

仕事とは何だ?とか

なぜ働かねばならないんだ?という

哲学的な思考が薄いような気がするんです。

 

これはキャリアに関しても同様で

今までは特別に意識しなくても

定年退職まで普通に働けたわけですけど

時代は段々とそれを許さなくなってきています。

 

もっと多角的に仕事や働くということを

深く追求してみるのもいいんじゃないでしょうか?

 

今回ご紹介する書籍は、

【 ライフワークの思想 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 ライフワークの思想 』

外山 滋比古 ちくま文庫 を読みました。

 

著者である外山さんの著書は

下記を読んだことがあります。

 

ka162701.hatenablog.com

 

この本はかなり有名なようですが

私自身も大変に勉強になりました。

 

これで私の頭に外山滋比古という名前が

完全にインプットされました。

 

そして次は翻訳ではありますが

下記の本を読みました。

 

ka162701.hatenablog.com

 

これはこれで面白い内容で

外山さんの著書は

いつかまたどこかで読みたいなと思っていましたら

出会ったのが本書でした。

 

ライフワーク。

人生を賭けてする仕事。

生涯に渡って続ける仕事。

 

医師のキャリアに関する仕事をする私としては

これは外せないと思い、

外山さんがどんな主張をするのか

楽しみにしながら読み始めたのでした。

 

目次

第1章 フィナーレの思想

第2章 知的生活考

第3章 島国考

第4章 教育とことば

 

感想

自分自身の仕事柄ですけど

「仕事」とか「働く」とか

「キャリア」とかについては

相当に熟慮してきたつもりです。

 

キャリア本や仕事に関する本も

かなり読み込んできました。

 

ただ発想をちょっと変えると

新たな視座が手に入るものなんですよね。

 

逆に言うと

ある一定時期に流行っているものとか

最近のトレンドとか

そういうものもまあ大事ではありますけど

働くってそんなに浅くはありません。

 

もっと本質を追求し、

根本的な思想を問うべきものではないでしょうか。

 

本書は期待が多すぎたために

正直、少し物足りないところはあります。

 

しかしところどころに光るものがあるというか

これじゃ!というような

大ヒントをいただくことができました。

 

さすが外山さんというところですが

やはり勉強や情報収集は多角的にすべきですね。

 

とても良い勉強となりました。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所を

ご紹介いたします。

 

昼の間が往路、

夕方帰宅してからが復路である。

いずれにしても、

サラリーマンの多くは、

帰ってきても、

前に進むことしか関心を示さない。

前進だけがこれ人生と思っている。

これではいつまでたっても、

人生のゴールに入れない。

折り返し点を回ってからは、

これまでとは反対のほうに走ることが前進になる。

若い人とすれちがって、

どうしてそんなほうへ走るのかと聞かれたら、

「いや、私のゴールはこっちなんだ」

というだけの自信がなければ、

人生のマラソンは完了しない。

(P.17)

 

みんなと同じ。

これが右肩上がりの経済成長の時代と

現代でもっとも変わったところではないでしょうか?

 

価値感は多様化し、

大量生産大量消費の時代は終焉したのですね。

 

オレはこっちだ。

そこに理由を付けることができるかどうか。

そこでキャリア人生は大きく変わると思います。

 

たしかに前へ走ることは進歩だ。

だが、折り返し点では

それまでの価値観をひっくり返して、

反対側に走ることがすなわち前へ進むことになる。

(中略)

前半の四十五歳くらいまでは、

なるべく個性的に、批判的に、

そして自分の力で生きていくのが、

その人間を伸ばす力になるが、

折り返し点をまわった人間は、

もう小さな自分は捨て、

いかにして大きな常識をとり込んでゆくかを考える、

ときには純粋でないものがあっても、

それがコクのある酒には

必要なものではないかと気がつくようになる。

(P.30)

 

キャリアの折り返し点。

意識したことがありますか?

 

最近私は強く思うのですが、

40代、50代で折り返し点を意識しないと

若い頃と同じように突っ走り

健康を害したりするものです。

 

折り返し点以降こそが

本物のキャリアなんです。

 

20代、30代の頃とは一線を引きましょう。

 

ライフワークとは、

それまでバラバラになっていた

断片につながりを与えて、

ある有機的統一にもたらしてゆくひとつの奇跡、

個人の奇跡を行うことにほかならない。

(P.34)

 

キャリアとは「スキル」と「経験」です。

 

今まで積み重ねてきた

「点」と「点」がくっつき

「線」となる。

 

「線」と「線」が組み合わさり

「面」となる。

 

それなりの年齢になったら

「面」をいくつ持っているかが勝負です。

 

いつまでも「点」を集めていてはいけない。

 

不調和なものを調和させるからこそ、

そこに独特な美しさが生まれる。

雑然とした現代をひたすら悪いと

きめてしまうことは当を得ない。

(中略)

雑然とした多様の中においても、

コンダクターがしっかりしていれば、

すばらしい創造が可能である。

人生を芸術にするーーー

これぞ最高の知的生活である。

(P.45)

 

本来は経営者や管理職が

このコンダクターにならねばなりませんが

良くてただのマネージャーやリーダー、

悪くすると組織の成長を阻害する立場となり

若手社員のお荷物になりかねません。

 

不調和なものを調和させる。

こういう新規性の高い活動ができるからこそ

コンダクター、ま、メンターと言ってもいいでしょうか。

 

管理職になったら意識したほうが良さそうです。

 

「わかる」は「わける」「わかつ」ことによって、

複雑な全体をときほぐして理解することを

言葉の上でもあらわしている。

大きな単位では、情報が多すぎて、混乱する。

わかりにくい。

小さな部分に分解すると、

わかりやすくなる。

ものごとの理解に分析という方法が

欠かせないわけだ。

(P.48~49)

 

この細分化する作業ができるかどうかで

物事の理解力に差が出ますね。

 

賢くなりたいならば

溢れんばかりの情報を

いかに分解するかに掛かっているのでしょうね。

 

文化は人間の心的態度を基盤にしている。

社会の心的態度は一朝一夕に変化しにくいもので、

つねに、古いものを残存させる傾向をもっている。

物資や資本の世界ではげしい変動が起こっていても、

それがただちに、

文化という上部構造にひびかないでいるのは、

この心的態度の保守性による。

外来の勢力に対して、

文化は、政治や経済よりもずっと抵抗力が強い。

(P.138)

 

政治も経済もただの既得権益の分捕り合いです。

人が生きていくためには

「文化」のほうが余程重要ではないでしょうか。

 

裏を返すと

文化を中心に政治や経済ができる人が出てきたら

その人はノーベル賞を取れるんじゃないかな?

 

近代の国家はそれぞれの民族集団を

なるべく島のような

独立性のつよいものにしようとしているとも考えられる。

地続きの国と国が国境を設けて、

往来をチェックする。

物資を移動させれば関税をかける。

いかにも不便のようであるが、

一方ではまた、

国というもののおかげで

われわれは比較的安定した生活を

営めるようになっているのも事実である。

島国形式は地理的に

島国といえるところにあるのではなくて、

近代の社会組織の中にかくれた存在として

いろいろのところにひろく行きわたっているのである。

(P.162~163)

 

これはイギリスについて書かれているのですが

私たち日本はイギリスから学ぶことが多そうですね。

 

アメリカや中国よりも

イギリスとコミュニケーションを密にしたほうが

ずっといいんじゃないかと思う。

 

教育はすべての事象を

言語に置き換えて処理する。

知識も思考も、

すべて言語を通じて行われる。

(中略)

高等教育を受けた人は

一般に言語に神経質で、

言葉にこだわるが、

そのわりに現実についての関心は

あいまいなことが多い。

言葉づらさえよければ

納得するのであろうか。

そして、これが面食い文化を生み出すというわけだ。

(P.182)

 

言葉を現実化する。

できていないですね…。

 

言葉遊びと

言葉で人を翻弄し、

言葉で人を騙し、

言葉で人を傷つける。

 

現代人は言葉の使い方を間違っている。

そうとも言えるのかもしれません。

現実を言葉にせよ。

 

一般意味論は誤解と混乱を避けるために、

言語における抽象のはしごをおりろと教えるが、

われわれはいま、

ときどき言葉のバスからおりて、

自分の足で歩いてみる必要のあることに

気付かなくてはならない。

ものごとに直接ぶつからなくてはならないときにでも、

ただ言語のみ反応していることがいかに多いことか。

(P.184)

 

言葉遊びをして

言葉に遊ばれている。

 

現実を直視しないから

現実に翻弄される。

 

言葉とは何だ?

何のために人類は言葉を編みだしたんだ?

 

もう1度ここからやり直したほうが

いいのかもしれないなぁ。

 

生活にすこしゆとりが生じると、

人間は幸福とは何かを考え始める。

衣食足って礼節を知るというのも、

その一形式と見てよい。

経済的余裕がない間、

幸福は金銭で買うことのできるものである。

金があればあるほど、

物が豊かであればあるほど、

幸福だと信じる。

ところか、何とか暮らしていかれるようになった人たちは、

やがて、経済力と幸福とは

正比例しないことを発見して、

改めて、幸福とは何ぞや、と

立ち止まって考える。

(P.205)

 

今だけカネだけ自分だけ。

 

いかに自分をここから脱却させるか。

それこそが幸福につながるのではないでしょうか?

 

未来を、プライスレスな価値を、他者や社会を

本気で考えていかないと

自分を不幸にするのかもしれません。

 

菊池寛は”みんなすっかり放した”と誇った友人に向かって、

”それはいけない、どこか一、二カ所は

わからぬところを残しておかなければ……”と忠告したという。

芭蕉は”言いおおせて何かある”といっている。

全部いいつくしたらおしまい、ということだ。

あえていわずに伏せておく。

それが人の注意を引くのである。

(P.219)

 

理解してもらおうと思えば思うほど

完璧には仕上げない。

 

仕事論としても

相当に通用するように思いました。

 

徒然草』に

ものいわぬは腹ふくるるわざなり、とある。

胸にあることをしまっておくのは

たいへん体によくないことを

昔の人も知っていたらしい。

それをいかにエレガントに発散するかが

現代人の知恵である。

(P.229)

 

エレガントな発散。

少なくともマウント取って

否定、非難、批判することとは違いますね。

 

自分語りができる場所。

サードプレイスが必要でしょうか。

 

評価

おススメ度は ★★★☆☆ といたします。

 

こんだけ勉強になっているのに

あえて厳しい評価をするのは、

期待が大きかったので

ちょっと残念であったというところと

あとはもう少しピックアップするコラムが

他にあったんじゃないかというところです。

 

物凄く勉強になるところと

早く読み飛ばしたいところがあったので

その点をマイナスしました。

いい内容なんですけどね~。

 

それでは、また…。

 

 

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