ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

待場の憂国論

 

おはようございます。

 

医師の転職、クリニック開業を

キャリアプランを軸にしてサポートする

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

私も若い時分は国を愛するなんて

なかなか恥ずかしくて言えなかったんですよね。

でも年を取るごとに国を愛する事は

とても大事と思えるようになりました。

 

本日のブログのタイトルは、

 待場の憂国論 】といたしました。

 

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本書をピックアップした理由

『 街場の憂国論 』

内田 樹 晶文社 を読みました。

 

まあ私は内田さんの本を見つけると

内容をあまり確認せずに即買いしておりますので、

本棚にはまだ読んでいない内田さんの本が

かなり積みあがっているのです(笑)。

 

だって内田さんの出版ペースって物凄く早くて、

なかなか追い付かないんですよ。

 

まして内田さんの著書ばかり読むのもどうかと思いますし、

いくら大ファンだからと言って

自分の知的好奇心には素直に従いたいですからね。

 

仕事柄、医療の本を読む事も必要ですし、

人を学ぶ、社会の仕組みを学ぶという

私のポリシーも大切にしたいですから

今後も数冊に1冊の割合で

内田本は読み続けてまいります。

 

さて、本書は憂国論です。

国を憂う…。

幕末の志士が好きな私としては

憂国という行為を高く評価したいですね。

ただあまりにも凝り固まった思想は勘弁です。

 

内田さんの憂国ですから、

やはり深い考察なのだろうな~と

大いに期待をしながら読み始めました。

 

目次

第1章 脱グローバル宣言、あるいは国民国家擁護のために

第2章 贈与経済への回帰

第3章 国を守るということ

第4章 国難の諸相

第5章 次世代にパスを送る

あとがき──「アンサング・ヒーロー」という生き方

 

感想

さすがのひと言ですね。

もうまえがきから胸ぐらを掴まれた気分です。

 

過去のある時点から、

僕は他の人があまり言わない事を

選択的に書くようになりました。

 

た・確かに内田さんと同じ事は

あまり他で見掛けません。

なぜそうしたか?について理由を説明しているのですが、

これがなるほど…と素直に頷けます。

 

内田さんの論考は

多くの人が言う事よりも

余程頭にスッと入ってきますし、

共感できたり、

考えさせられたり、

誰かに伝えたくなったり、

もっと調べたくなったり、

後頭部を叩かれるような衝撃を受けたり…。

 

それはなぜか?

他の人があまり言わない事だからなのでしょうね。

しかもそのエビデンスに納得できる。

 

本作品も非常に学びとなりましたし、

私自身の知性が起動しました。

何だか頭が良くなった気がします(笑)。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所を紹介します。

内田さんの本はあまりにも多くなり過ぎるので

今回はその中でも特にグッときた5箇所に絞ります。

 

今の日本における若年層の雇用環境の悪化は

「多くの人に就業機会を与えるために、

生産性は低いが人手を多く要する産業分野が

国民経済的には存在しなければならない」という

常識が統治者からも、経営者からも、

失われたからではないか。

生産性を上げなければ国際競争力はつかない。

生産性を上げるためには人件費を最低限まで抑制しなければならない。

だから、「生産性が高くなればなるほど、

雇用機会が減少する」というスパイラルが起こる。

(P.122)

 

集団的な統合を果たすためには、

「人間は非利己的で、

崇高な目的をめざして行動するときに、

もっともそのパフォーマンスを高める」という

人間性についての「確信」が必要なのだが、

「リアリスト」が彼の貧しい人生経験を通じて観察した事例のうちには、

そのような人間観を担保してくれる経験が

どこにも存在しないからである。

(P.202)

 

歴史は事後的に回想すると、

「それ以外にありえない一本道」をたどっているように見える。

けれども、未来に向かうときには

「どれが正しいかわからない」

複数の選択肢の前に立ち尽くしている。

そのときに適切な選択ができるためには、

「なぜ『あること』が起きて、

それとは違うことが起きなかったのか?」

「『起きてもよかったのに、起きなかったこと』と

『実際に起きたこと』の間には

どのような違いがあったのか?」というかたちで

不断に想像力と知性のトレーニングをしておく必要がある。

(P.212)

 

私が今の日本の教育行政に対して一貫して批判的なのは、

教育行政の要路の人々が

「こうすれば子どもたちは勉強するようになる」と

信じている利益誘導の「リアリスト」ロジックは

もうとうに破綻していることに

彼らがまったく気づいていないからである。

今後も彼らは懲りずにさまざまな「利益誘導」によって、

子どもたちを勉強させようとして、

そのすべてに失敗するであろう。

彼らが「学校教育の目的は次世代を担うことのできる

成熟した市民を育成することである」という本義に気づくまで、

いったい私たちはあとどれくらいの時間を

無為のうちに過ごさなければならないのだろう。

(P.305)

 

人間が努力をするのは、

それが「自分のため」だからではありません。

「他の人のため」に働くときです。

ぎりぎりに追い詰められたときに、

それが自分の利益だけにかかわることなら、

人間はわりとあっさりと努力を放棄してしまいます。

「私が努力を放棄しても、困るのは私だけだ」からです。

でも、もし自分が努力を止めてしまったら、

それで誰かが深く苦しみ、

傷つくことになると思ったら、

人間は簡単には努力を止められない。

自分のために戦う人間は弱く、

守るもののために戦う人間は強い。

これは経験的にはきわめて蓋然性の高い命題です。

「オレがここで死んでも困るのはオレだけだ」と思う人間と、

「《彼ら》のためにも、オレはこんなところで死ぬわけにはゆかない」

と思う人間では、ぎりぎりの局面でのふんばり方がまるで違う。

それは社会的能力の開発においても変わりません。

自分のために、自分ひとりの立身出世や

快楽のために生きている人間は

自分の社会的能力の開発をすぐに止めてしまう。

「まあ、こんなもんでいいよ」と思ったら、

そこで止る。

でも、他人の人生を背負っている人間はそうはゆかない。

人間は自己利益を排他的に追求できるときではなく、

自分が「ひとのために役立っている」と思えたときに

その潜在能力を爆発的に開花させる。

これは長く教育現場にいた人間として

骨身にしみた経験知です。

(P.331~332)

 

私なりに厳選したものですが、

特に最後の観念は私も共感しますし、

ウンウン頷きながら読みました。

 

そうなんだよ!

グローバリズムだとか、

コストパフォーマンスだとか、

利益誘導なんかは

人間の本性ではなく、

魂を売った輩たちのつまらん論理であり、

いつまでもそんなものに騙されてはいけない。

そう強く思いました。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。

 

今年は2019年です。

平成の世も終わり、もうすぐ令和の時代になります。

 

しかしこれもプロセスです。

私たちの世界は地球が滅亡しない限りは

まだまだ長く続くでしょうし、

日本という国も余程の事がない限りは

10年、50年、100年、1000年と続いていく訳です。

 

その中で現代に生きる私たちがせねばならないのは

次世代に少しでも良い社会を渡す事だと思うんですね。

 

果たしてこの国はそれをしようとしているでしょうか?

少しでも努力をしているでしょうか?

そう考えると正直憂鬱になりますし、

為政者たち、権力者たち、オピニオンリーダーたちは、

自己利益以外に何を考えてるんだ?と

文句のひとつも言いたくなります。

何も考えていないんだろうなあ…。

自己利益以外は…。

 

それも憂国か…。

1人1人が微力ながらも

社会に貢献していく。

それしかありませんね~。

 

それでは、また…。

 

 

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