ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

評価と贈与の経済学

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

岸田総理は

新しい資本主義がどうのとおっしゃいますが

どうせ新しい経済体制を考えるのであれば

資本主義から一旦離れるべきじゃないかと思うんですね。

 

いや多分無理だと思うんですよ。

 

イチ政権で何とかできるものではありませんし、

もし本当に新しい資本主義が編み出されて

それが素晴らしいものであれば

世界的な大発見というか、

それこそ世界を大改革することになるかもしれませんが

まあそもそも人気取りの政策でしょうし、

所詮、小手先の案が出てきて

誰にも相手にされなくて

いつの間にか消えていくというのが

関の山かなと想像しています。

 

言い方が悪いかもしれませんけど

むしろ新しい経済体制とか、

新しい働き方とか

新しい税制制度とか

新しい所得分配とか

そういう具体的なものでないと

あんまり意味がないんじゃないかなあ。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 評価と贈与の経済学 】 です。

 

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本書をピックアップした理由

『 評価と贈与の経済学 』

内田 樹 岡田 斗司夫 徳間書店 を読みました。

 

誠に申し訳ないのですが

私は岡田斗司夫さんを存じ上げませんでした。

 

でも敬愛する内田樹さんと対談するくらいの人であれば

きっとユニークな内容なのだろうなと

勝手に期待して本書を手に取りました。

 

内田流の経済学。

おそらく本来の経済学とは違うでしょうけど(笑)

それはそれでいいと思い

楽しみにして読み始めたのです。

 

目次

第1章 イワシ化する社会

第2章 努力と報酬について

第3章 拡張型家族

第4章 身体ベースの人間関係を取り戻す

第5章 贈与経済、評価経済

第6章 日本の豊かな潜在力

第7章 恋愛と結婚

 

感想

う~ん、面白い。

もちろん経済学として面白いのではなく

話しのテーマは幅広いですし、

あっちにもこっちにも脱線するのですけど

それがまた面白いのです。

 

そして岡田斗司夫という人物も

実に面白い。

 

岡田さん自身も内田さんのファンであり、

聞きたいことを聞きまくった感が満載ですが、

これは内田ファンの私としても

気持ちがよくわかります。

 

なので、岡田さんの主張も面白いのですが、

内田さんの見解を引き出そうとしている姿勢がまた

好感持てました。

 

本書は若い方々におススメします。

10代は早いでしょうけど

20代、30代の方には必読の書と言ってもいいかもしれません。

 

特に、キャリアや人生が思うように行っていない人。

そういう方には好転させるヒントが満載かと思います。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介します。

 

「もういいんです症候群」ってぼくは呼んでるんですけれども、

子どものころから好きだったことのはずなのに、

「もういいんです」だけで辞めてしまう。

(中略)

「自分の気持ち至上主義」って呼んでるんですけども、

自分のなかの盛り上がった気持ちが絶対なので、

その盛り上がった気持ちがなくなったときに、

誰に対しても責任が請求しにくい。

(中略)

例えば魔法とかUFOとかを信じる気持ちってあるじゃないですか。

あれは論理的に考えて信じる信じないじゃなくて、

信じたいと思うから信じるわけなんですよ。

ディズニーランドは夢の国であるとか、

ミッキーは実際にいるとか、

信じたいから信じるのであって、

自分の気持ちが一番。

世の中の情報っていうのは

気持ちを補助するためにあると考えてるわけです。

だからもし自分が否定するとしたら、

自分が持つ否定的な気持ちを

補強する情報ばかりを集めるっていうのが楽しく、

やりがいのあることになってくる。

自分が肯定しようと思ったら、肯定ばっかり。

(中略)

自分の気持ちっていうのは滅多に起動しないので、

起動したらすごく貴重だから、

これこそが生きてる証しだとするんですね。

彼らは彼らで生命エネルギーを長続きして

燃やそうとしてるんですよ。

そうでもしないと生命エネルギーが日持ちしないんですよ。

(P.27~29)

 

岡田斗司夫流の現代若者学です。

なかなか示唆に富んだ見方ですよね。

 

すでに若者ではなくなった私ですが、

現代は若者が若者らしくないところもあるので

せめて精神的には若さを胸に日々活動しています。

 

みんな身体性を取り戻したいと思っているんだなとわかる。

イワシ化する社会」っていうのは

「退化する社会」というのとおなじことだと思うんですよ。

みんなが頭で考えて、脳だけで判断するから、

その選択が自分の生きる力を高めるか、

生き延びる可能性を高めるかということを吟味しないで、

ふらふらマジョリティについてゆく。

だから、ふつうなら

そんな極端なところまで行く前に気がつくはずの、

極端に反生命的なことをして、

「心が折れ」たりする。

身体から送られてくる

「こっちに行ったほうがいいよ、

 そういうことしないほうがいいよ」という

生命についての情報を無視して、

頭だけで考えているからだと思う。

(P.44)

 

これ、わかります。

人間ってバランスを崩すとダメなんですよね。

でも現代社会や、現代を生きる我々は

様々なバランスを失っているように感じます。

 

心と身体のバランス。

頭と身体のバランス。

もう1度見直したほうがいいかもしれませんね。

 

いましている努力に対して

未来の報酬が約束されないと

働く気がしないという人が増えてきたけどさ、

いましている努力に対して

未来の報酬が約束された時代なんて、

これまでだってなかったんだよ。

だって、明治維新からあと、

二十年おきに戦争してたんだぜ。

「約束された未来」なんかあるはずないじゃない。

報酬の約束なんかなくても、

とりあえず生き延びないといけないからって

みんな必死で生きてきたんだ。

努力と報酬が相関するというのは、

理想なの。

はっきり言えば、嘘なの。

努力と報酬は原理的に相関しないの、全然。

するときもあるかもしれないけど、

それは例外。

(P.53~54)

 

その通り!

キャリアや人生を見誤ってますよ。

損得ではなく善悪で生きなさいと

私は声を大にして言いたいです。

 

そうしないと報酬が手に入らないです。

 

「努力したら、最終的には報酬がある」ということは

言ってもいいと思う。

でも、どんな報酬がいつもらえるのかは

事前には予測できない。

ある種の努力をしているうちに、

思いもかけないところから、

思いもかけないかたちで

「ごほうび」が来る。

それはまさに「思いもかけないもの」であって、

努力の量に相関するわけじゃない。

(P.55)

 

そうそう。

そういうものです。

なんでここを勘違いするのでしょうか。

勘違いして、さらに自分を窮地に追い込んでる気がします。

人事を尽くして天命を待つですよ。

 

とにかく実に多くの人たちは、

いまは親族共同体にうまく統合されていない。

子どものときに、

自己防衛する方法も知らないときに、

まさに子どもをケアすべき親から深く傷つけられた人たちは、

共同体への同化力が低いですよね。

他者と共生する能力そのものが損なわれてしまっているから。

(P.102)

 

悲しいニュースを見ると

こういうところからなのかなと思います。

世の中の流れが間違っていたとも言えますが

おそらく揺り戻しが来るのではないでしょうか。

 

あらゆることに優先するのは

「集団が生き延びること」ですから。

単独で「誰にも迷惑をかけない、かけられない」生き方を貫くより、

集団的に生きて「迷惑をかけたり、かけられたり」するほうが

生き延びる確率が圧倒的に高いんですから。

親族を解体し、地域共同体を解体し、

終身雇用の企業のような中間共同体も解体して、

最終的にみんな孤独になってしまったのは、

「ひとりでも生きていける」くらいに

社会が豊かで安全になったからです。

個人の「原子化」は平和と繁栄の代価なんです。

でも、そんな平和と繁栄は

歴史的に見ても例外的なものにすぎない。

もう、そんなのんびりした時代は終わってしまった。

(P.103~104)

 

生存戦略

いかにしてサバイバルするか?

私たちはここから再考すべきなのでしょうね。

 

とりあえず、おなじ空間に寝起きして、

「おなじ釜の飯」を食う。

「おはよう」「おやすみ」

「いただきます」「ごちそうさま」

「いってきます」「いってらっしゃい」

「ただいま」「おかえり」

その八語を家族全員が

適切なタイミングできちんと口にできるだけで、

家族制度は十分もつと思うけど。

(P.111)

 

同意します。

家族は難しく考えたら持ちません。

シンプルで自由さが必要です。

 

だって、われわれがいま当然のように生きている

文明的な空間って、

誰かが必死になって

無秩序を世界の外に押し戻す仕事をしてくれたおかげで、

ようやく確保されているものなんだから。

道を気楽にすたすた歩けるのは、

誰かがぼくらが起き出す前に、

一生懸命「雪かき」仕事をしてくれた結果でしょう。

そういうふうに、

当たり前に見えることが

実は無数の人間的努力の総和なんだということを

思い知るって、

ほんとうに大切なんですよ。

(P.128)

 

生きている自分ではなく

生かされている自分に気づけるか?

それだけでその人の人生は変わると思います。

 

他者があっての自分。

逆だと独りよがりになってしまうでしょう。

 

人間は誰かに贈与するっていう

シチュエーションに遭遇しないと、

自分が実は「持っている」側、

つまり贈与を受けてる側だっていう、

へりくだった自覚をすることが不可能だから。

(P.159)

 

そうなんですよね。

私たちは、私たち自身のことが

実はかなり見えていないんですよね…。

きっかけが必要です。

 

社会人というのは

スキル、ネットワーク、そして人柄の

三要素からできていると思うんですね。

(P.175)

 

これはもう完全同意です。

この3つを持っていない社会人は

やはり苦労しますね。

特にこれから必須となるのは人柄と思います。

 

就職試験とか、

結婚とかの段になって、

若いときにネット上で書き飛ばしていた

鬼畜的なテクストが消せなくて大慌てしているやつって、

ほんとにいるもの。

調べようと思えば、

その人がどんな「捨てアカウント」で、

どんなことを書いていたのかわかってしまうもの。

これからは昔ネット上に書いたことがばれて

懲戒くらうやつとか、内定取り消しになるやつとか、

婚約解消されるやつとかがだんだん出てくると思う。

でも、悪いけど、これは自業自得だと思う。

身元を特定される心配がないと思って、

えげつない本音をまきちらしてきたやつが、

あとで「身元特定されました」と言われて、

「話が違う」と泣いても仕方がない。

(P.184)

 

確実にそうなるでしょうね。

過去ログを消すビジネスとかが現れるかもしれませんが、

かなりの確率でバレるでしょう。

 

twitterで言いたい放題の人、

気を付けたほうがいいと思いますよ。

もう遅いかもしれませんが…。

 

この二十年間くらいでいちばん変わったことは、

外形的・数値的な基準で

人間を判断するようになったことだと思う。

勝ち負けだけが問題で、

誰もが他人との比較でどっちが上か下か、

その優劣ばかり気にしている。

でも、数値的に優劣が決定できるのは

「ほかの条件がすべておなじ場合」だけです。

だから、競争社会というのは

必然的にすさまじい規格化圧力が働く社会になる。

全員を叩いて、型にはめないと、

数値化可能な能力による格付けができないから。

競争社会では、人間はそういうふうに

「誰が見てもすぐに優劣がわかる能力」を基準に格付けされる。

でも、人間の能力の九十%は

「外見からだけではわからない」ものなんです。

(P.221)

 

これがグローバリズムの正体ですよね。

でもこんなの長続きするわけがありません。

人間が壊れますよ。

 

ポストグローバルなこれから。

もっと人間くささが前面に出てくるような気がします。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

別に五つ星でもいいのですが、

ボリュームが足りないように感じました。

もっとこの2人の会話を聞きたいって。

 

上記でお知らせした箇所だけではなく、

ええ!とか、

おお!とか、

ああ、なるほどね~とか、

確かにそうだよね~とか、

そういうことだったのか?とか、

そんなのありか?とか、

とても新鮮な思いで

心を揺さぶられながら読みました。

 

生きるヒントが満載の1冊です。

キャリアや人生を今より

少しでも良くしたい方は読むべきです。

 

それでは、また…。

 

 

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