ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

首都感染

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

私だけじゃなく

もっと先を見通すことができたらいいなと

時々、思うことがある方は多いと思います。

 

先が見えないというのは

悩みのひとつであるでしょうし、

先が見えないからこそ

何を考え、どう行動したらいいのかが

明確にならないのですよね。

 

まあ何でも先が見通せたら

それはそれでつまらないんじゃないかとも思いますけど

せめてもう少し先を見通したい、

これから何が起こるのかを把握して

それに備えておきたいと思う方は

きっと少なくないんじゃないでしょうか。

 

ところが世の中には

まるで予言者のように

先を見通す方が存在するのも確かです。

 

本書は驚くような

未来予測がされていてビックリしました。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 首都感染 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 首都感染 』

高嶋 哲夫 講談社文庫 を読みました。

 

振り返ってみれば

高嶋哲夫さんの著書は

もう随分前に読んだことがあるんです。

 

何せもう20年以上前のことですから

うろ覚えではあるんですけど、

「イントュルーダー」と「原発クライシス」を

読んだ記憶があります( 多分…笑 )。

 

ライトな小説というよりは

かなり分厚く、ボリュームもあって、

それを一気に読ませてしまうほどの面白さがあり、

すごく面白かった覚えがあります。

 

ですが、なぜか、その後は読むことがなく、

本書を発見したときには

すぐに購入しました。

 

首都感染…。

実は買ったのは結構前なんです。

 

だってコロナ渦においては

さすがに読む気がおきなくて

面白そうだから読みたい気持ちと

そうは言っても今じゃないよねという気持ちが混在し、

延び延びになっていたのです。

 

ようやくコロナもだいぶ落ち着いてきましたので

高島さん、久しぶりに楽しませていただきますよと思いつつ

ワクワクしながら読み始めたのでした。

 

目次

プロローグ

第一章 対策

第二章 感染

第三章 封鎖

第四章 拡大

エピローグ

 

感想

さ・さすがです。

メチャクチャ面白かったです。

 

そして高島さんの先見の明を

とても恐ろしく感じました。

 

本書が発行されたのは

2013年11月なのです。

 

まずは講談社の内容紹介をご覧下さい。

 

二〇××年、

中国でサッカー・ワールドカップが開催された。

しかし、スタジアムから遠く離れた雲南省

致死率六〇%の強毒性インフルエンザが出現!

 

中国当局の封じ込めも破綻し、

恐怖のウイルスがついに日本へと向かった。

 

検疫が破られ都内にも患者が発生。

生き残りを賭け、空前絶後の“東京封鎖”作戦が始まった。

 

強毒性インフルエンザ・ウイルス出現!

感染者の移動を禁止しなければ

パンデミックは阻止できない。

総理は“東京封鎖”を決断した。

 

中国でワールドカップを開催する日が来るのかは

ちょっと何とも言えませんけどね

その後の展開はまさに新型コロナとそっくりなのです。

 

そりゃ感染症の専門家であれば

いつか来るだろう…くらいの予測は立つでしょうけど

高島さんは機械工学が専門のようです。

 

前述した原発などはお詳しいのでしょうけど

ウイルスに対してはどうでしょうか?

 

巻末に参考文献が数多く紹介されていましたけど

おそらく相当に勉強をされたんじゃないかと思います。

 

そして私のような素人から見たら

よくまあここまでリアリティのある話しが書けるもんだと

素直に頭が下がります。

 

中国が発症であること、

その後世界にあっという間に広がること、

現実となった新型コロナと違うのは

強毒性で何と致死率が60%であること、

日本政府が世界の模範となるような

断固たる決断を下したこと、

劇的に効くワクチンや治療薬を

日本国内で開発できたこと。

 

よく考えれば随分と異なるんですけど

高島さんには

新型コロナが来ることが予見されていたのかと

思わざるを得ないようなストーリー展開なのです。

 

当然、フィクションですから

さすがにそれはないんじゃないか?という

そんな箇所もなくはないですけど、

それにしても物語としては秀逸です。

 

以前に読んだカミュの「ペスト」よりも

ストーリー展開のダイナミクスさや

圧倒的な読みやすさがあり、

(まあ同じ日本語話者というのは大きいですが)

私としては首都感染に軍配を上げたいところですが、

だいぶ時代が違いますから

同じ土俵に上げるのはカミュがちょっと可哀想か。

 

ka162701.hatenablog.com

 

理論的にあり得るのかわかりませんが、

致死率が60%というウイルスが

もし現実的に降りかかってきたら

私たちの日常はいったいどうなってしまうのでしょうか?

 

新型コロナの世界の致死率が

2020年2月時点で8.5%だったそうですが、

これが2022年8月には0.27%まで下がったようです。

 

www.yokohama-cu.ac.jp

 

これもワクチンが全世界で接種されるようになったのが

最大の要因ではないかと思うのですが、

この水準でも世界はこれだけ大混乱をしたわけですね。

 

本書では60%ですよ!

バタバタと人が死んでいくわけです。

 

もちろんあくまでもフィクションですから

これくらいに極端なほうが

ストーリーとしては面白いというのはありますが、

今から思えば新型コロナへの警報とも言える作品でしょうか。

 

そもそも結果として

致死率や感染力というのがわかったわけですが

最初の頃はどんな特性を持つウイルスか

全くわからなかったのですよね。

 

だからこれだけ大騒ぎになったのですし、

人間はわからないものへの恐れはやはり大きいです。

 

もし周囲の人が

苦しみながらバタバタと亡くなってしまったら

自暴自棄になってしまう人も出てくるでしょう。

 

なかには犯罪に手を染める人も出るでしょうし、

暴動などに発展してもおかしくありません。

 

新型コロナが収まりつつある昨今ですから

あえて丁寧な検証と振り返りが

国としても自治体としても個々においても

必要なのではないかと考えます。

 

我が国においても

内閣感染症危機管理統括庁が

国会で成立したようですが

これが次なるウイルスへの備えとして

機能してくれるといいのですが、

果たしてどうなるでしょうか?

 

再三言うように

あくまでもフィクションですから

あり得ないようなことも書かれているのですが

私が読んでいて最も感じたのは

政治の決断です。

 

本書においては総理と厚労大臣が

元WHOの感染症対策の専門家とともに

次から次へと重大な決断を下していくのですが、

現実の日本の政治家では

さすがに無理だろうなと感じました。

 

でも新型コロナへの対策でもそうだったように

決断が遅れれば遅れるほどに

感染は広がってしまうのですね。

 

トップの決断とは

何と重いもので、難しいものか。

 

こういう危機的な状況であれば尚更ですし

いくら小説の世界とはいえ

このような政治家は是非とも存在して欲しいと

つくづく思いました。

 

本書も細かい点を突っ込もうと思えば

いくらでも出てくるのでしょうけど

エンターテインメントとして価値がありますし、

クライシス小説(?)として

私たちの意識を高めるために警報を鳴らすという点では

さらに価値があるんじゃないかと思います。

 

久しぶりに高島作品を読んで

これは読まなきゃいけないな。

他の作品を買っておこうと素直に思いました。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

個人的には満点でもいいくらいに楽しめたのですが、

いや、この内容で楽しんではいけないかと思い直し

星がひとつ欠けました。

 

単なる読み物として楽しむなら

相当のレベルであると思います。

 

あんまり細かい点を気にすることなく

純粋にストーリーを楽しむのが良さそうです。

私はそんな感じで大いに楽しめました。

 

それでは、また…。

 

 

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