ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

人間を読む旅

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

私の個人的見解ですが、

人間について学ぶこと

・社会の仕組みを学ぶこと

この2点に関しては

私たちの生存戦略として

必要不可欠ではないかと考えております。

 

問題は何をどうやって?なんですけど

これは難しいです。

 

だいたい何を学べばいいのかは

正解のあるものではないと思われ、

とにかくアンテナをビンビンにして

感度良く目の前に現れたものに

突っ込んでいくことが大事じゃないかなと思います。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 人間を読む旅 】 です。

 


本書をピックアップした理由

『 人間を読む旅 』

城山 三郎 + 佐高 信 岩波書店 を読みました。

 

少し古い本ではありますが、

城山三郎さんと佐高信さんの対談であれば

学びとなるところは大きそうですし、

「人間を読む旅」というタイトルもいいですね。

 

城山作品は今までもかなり読んできたつもりですが、

振り返ってみると結構読んでますし、

他の著書の書評にも

なぜか度々使われているのが興味深いです。

 

ka162701.hatenablog.com

 

人間を読む。

果たしてお2人がどんな人について語るのか?

非常に楽しみにしながら読み始めた次第です。

 

目次

第一章 それぞれの人生

第二章 愚直と蛮勇

第三章 風を運ぶ人

第四章 信念のひと

第五章 男の美学

第六章 男の気概

第七章 使命感と頑固さ

第八章 私の読書術

 

感想

1999年6月に発行された本ですから

時代的な古さは感じます。

 

しかし城山ファンにとっては

まさに必読の書と言えるでしょうか。

 

各作品の背景や意図などがわかり、

またなぜこの人物を取り上げたか?など

その辺りの事情もわかり実に興味深かったです。

 

そして城山さんの語り口が最高です。

ソフトで、物腰柔らかく、淡々と

自然体で話すその姿勢がらしさと安心感を与えてくれます。

 

城山さんが関心を持っているのは

別にビジネスとか、経営とか、経済とか、

そういうことだけではなく

そこで奮闘する「人」なんですよね。

 

「人」がいてこそ成り立つわけですから

当たり前と言えば当たり前なんですけど

その捉え方、表現の仕方がすこぶる素晴らしいです。

 

城山さんが興味を持った「人」には

人として優れたところがあり、

それはスキルや経験ではなくて

「人物面」なのですね。

 

温かいというか、優しい眼差しが

そこにあることがヒシヒシと感じられて

気分よく読むことができました。

 

それでは恒例の私がグッと来た箇所をご紹介します。

 

城山さんもそれぞれの人生というのが好きですよね。

あっちの人生よりおれの人生のほうが上だとか、

そんな思い上がりがない。

それは、城山さんがよく言われる、

自分はこの歳になってまだ迷っているという……。

(P.19~20)

 

城山さんの人生観がわかり、

好感度が増してしまいました。

 

人それぞれの人生ですものね。

そこには勝ち負けなんて存在するわけがなく、

幸せな人生と

そうでない人生があり、

納得できる人生と

そうでない人生があるだけと言えるでしょうか。

 

<佐高>

小泉純一郎という人は、

どんな感じだったですか?

<城山>

竹を割ったような人だね。

子分をつくらない、子分にならない。

(P.49)

 

いや別に何というわけではないのですが、

こんなにわかりやすい小泉純一郎評というのは

そう滅多にないんじゃないでしょうか。

 

たったひと言、ふた言ですからね。

これも城山さんの才能というか

人柄なんですかね。

 

要するに、自分の中に

自分はタダの人だというのがあるんじゃないかな。

どんどん自分が肥大していく人と、

全然昔と変わらない人とがいる。

夜食を食べるときに

社員がみんな列をつくっていると

いちばん後ろにつく。

俺は社長だとか、

いちばん前にいくとか、

全然そういうことを考えない人だから。

いつもタダの人間というのか、

ぼくはそれはすごく大事なことだと思う。

(P.58~59)

 

これは本田宗一郎さんを語った箇所なのですが、

言いえて妙と言いますか、

城山さんらしい観点のように感じました。

 

本田宗一郎さんの本は世に多いですが、

城山さんのような視点は他にないかもしれません。

 

タダの人でい続ける。

現代社会にも通じる人生観ですね。

謙虚さは身を助けます。

 

<佐高>

結局、人生というのは

照る日曇る日

歩いていかなければならないわけですね。

それをいさぎよく捨てた人には

あまり親近感がないということですか。

<城山>

親近感がないことはないけれども、

自己完結していて、

ほころびがない。

(P.90)

 

人生において

自分が主人公になりたい人って

だいたい主人公にはなれないものですね。

 

むしろ人のために、世のために尽くしてきた人のほうが

自然と主人公に祭り上げられるような気がします。

 

自分、自分という人には

やはり人間的な魅力が欠けていますね。

 

人生終わってみなくちゃわからんということがあるから、

どういう終わり方をしたかを質したい、

ということはありますね。

(P.90~91)

 

そっか。

確かに私は仕事では

中長期的な視点で考えましょうと

転職も開業もアドバイスをしていますが、

究極的には終わってみなきゃわかりませんね。

 

人は必ずいつか死ぬわけですけど、

その時が来るまでは

終わりなんてないさ、

終わらせることはできるけど…と考えて

愚直に歩むのが良さそうですね。

 

それから、これはシャンドのことばですが、

「金融というのは、ただ利息があがり、元金が返れば、

 あとは構わぬということではない。

 たとえ、かたい取引先であっても、

 金がどのようなところにつかわれるかということに、

 注意していなければならぬ。

 預金者についても、どういう事情で預金するのか、

 知っておくことが必要である。

 そうしてこそ、ほんとうの金融の働きが生まれてくる。

 銀行の心がけがよければ、

 商売が穏健に発達して行く。

 銀行の心がけがわるいと、

 商人は浮かれたり、萎縮したりする。」と。

まさにその通りです。

(P.134~135)

 

城山さんと佐高さんとの対談ですから

経済、そして金融について

語られる箇所は当然あるのですが、

この言葉が私には響きました。

 

よく銀行を例えるさいに

晴れの日に傘を貸すくせに

雨が降ると傘を貸さないと言われたりしますが、

銀行ほど自社都合で動く組織はないのかもしれません。

 

この言葉のように

きちっと筋を通していかないと

それこそネット銀行などにシェアを奪われて

さらなる合併などが出てくるのかもしれませんね。

 

「三年ぐらいではまだまだだめで、

 五年も続ければまあまあというところ、

 七年以上やっているものなら、

 まず信用できるので、世話をしてあげる」

(P.138)

 

これ渋沢栄一の言葉らしいですけど、

大成功者である渋沢の元には

援助を求めて多くの人が出入りしていたそうなんですね。

 

その時に渋沢はこのように言い、

「続ける」ということを判断基準にしていたようです。

 

現代社会では「続ける」ことの価値が薄れがちで

それこそジョブホッパーのように職場を点々としたり、

事業を次々と変えたりする経営者が多いですから

こんな時代こそ渋沢の言葉は身に沁みます。

 

ぼくは読書のタイプを三つに分けて、

一つは、気紛れ読書型というか、気紛れ散歩型。

今いったような、

なんでもないきっかけから読んでみるというものです。

読書本来の喜びはそういうものだと思います。

だから、ぼくも寝る時は、枕もとには、

そういう気紛れ散歩型の本をポッとおいて、

なんとなく関連のない本を読みます。

二つ目は、あなたの言われた、テーマを決めて、

それに関するものを系統的にというか、

集中して読むという集中豪雨型。

ぼくなんかも一つの作品を書こうと思ったら、

その作品に関するものは徹底的に読む。

普通勉強するというのはそうですよね。

もう一つは、変な言葉ですけど、交流・交易型。

例えば読書会なんかで

お互いに交流し合うわけです。

(P.171)

 

城山さんの読書論です。

とても興味深いですね。

 

言われてみれば私もそうかもしれないと思うものの

3種類どころか他にも種類はあるだろうなと思いました。

 

日本人って

大学に入学するまでは必死に勉強しますけど

大学在籍時に遊びを覚えて

社会人になると全く勉強をしなくなると言われます。

 

もちろん、そんなことないという勉強家も多いですけど

読書はその勉強家が

積極的に取り組むひとつではないでしょうか。

 

ある種の悪というものは、

世の中になくならないもので、

いいことばっかりだったら窒息するわけで、

悪とか善とかは、

そんな簡単に決められないものだということを

よくわかっている人が役人になってほしい。

(P.182)

 

必要悪ということでしょうね。

目の前に現れるものを

表層的にしか捉えられない人は

これからの時代、

社会の片隅でしか生きていけなくなるような

そんな気がします。

 

ただ、読書は両面あって、

一つは、すごく読書する人間は、

やっぱり伸びる力を持つということです。

今は情報時代というけど、

ほとんどのビジネスマンは情報に流されているんです。

彼はその情報の部品になっている。

読書していると、

逆に情報を部品として使いこなせるんです。

読書する人間は信頼できるということが一つ。

もう一つは、読書した人間は、

今いったように楽に生きれる。

つまり、出世するしないなんていうのは、

人生のごく小さな問題だということです。

読書をすることでいろんな生き方をしている人、

いろんな人生というのを追体験できるわけですから、

それによって慰められたり、

もっと励まされたりする。

(P.197)

 

これも城山さんの読書論ですけど

そうだ!と膝を打つ思いでした。

 

読書は身を助ける大事な要素だと思います。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。

 

城山さんの著書を何冊か読んだ方には

猛烈におススメできる面白い本です。

 

もちろんお読みでない方にもおススメできて、

こういう方は本書で紹介されている

大元の著書に興味が出てくるのではないでしょうか。

 

日本の近代の経済を学術的ではなく、

人を介して学ぶという意味では

本書はある種の歴史書とも言えます。

 

先が見えない現代社会で働く

ビジネスパーソンの皆さんには最適ですし、

経営を学ぼうとする医師の皆さんにも

いわゆる経営本とは異なる学びが手に入ると思います。

 

それでは、また…。

 

 

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