ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

「帝国以後」と日本の選択

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

読書家の皆さまには

それぞれの個性があると思います。

 

どんなジャンルの本を読むのか?

どのように読むのか?

どのくらいのスパンで読むのか?

 

もちろん私にもいろんな個性がありまして

代表的なところで言うと

・できるだけジャンルは幅広く

・様々な人の本を読む

・同時並行で2冊読む

こんな傾向があります。

 

こればかりはいいとか悪いの話しではなく

個性としかいいようがありません。

 

まあ読書を楽しみながらできて

それでよい勉強になるならば

いろんな方法があって良いですよね。

 

逆に言うと

読書を続けるために

自分なりの読書スタンスを

見つけるのが良さそうですし、

見つかったということは

とても幸せなことなのだと思います。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 「帝国以後」と日本の選択 】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 「帝国以後」と日本の選択 』

エマニュエル・トッド 藤原書店 を読みました。

 

誰かと話していた時だったか、

何かの本を読んでいる中だったか、

きっかけは忘れてしまったのですが

エマニュエル・トッド」が取り上げられました。

 

ああ、エマニュエル・トッドね、

何冊か読んだかな?ん、読んだ?

あれ、読んでないかも?

こんな感じでエマニュエル・トッドに興味を持ち、

調べてみたところ

どうやら私は読んでいないようでした。

 

むむ、これはいかん…と思い、

楽天ブックスでいろいろ調べてみまして

取り合えず2冊くらい買ってみるかと考えて

ポチポチっとしました。

 

その1冊が本書です。

もう1冊は近いうちに読むと思います。

 

「帝国以後」という前作が

世界的ベストセラーになったそうですが、

こっちはその後、しかも日本の選択、

どうせ少し前の本だし

別に順番とか関係ないだろうと考えまして

世界を知り、日本の選択を学ぶために

楽しみにしながら本書を手に取ったのでした。

 

目次

はしがき

序 アメリカニズム以後 ――「新米vs反米」の終焉

  E・トッド (石崎晴己 訳)

 

Ⅰ 『帝国以後』とは何か E・トッド

 

『帝国以後』を自ら語る 

   ――ベトナム以上に泥沼化するイラク情勢

『帝国以後』のキー概念

    ――演劇的小規模軍事行動

『帝国以後』が暴く“アメリカン・パワー”という幻想

米欧同盟から多極的連帯へ

    ――ヨーロッパは『帝国以後』をどう読むか

『帝国以後』とヨーロッパの自立

『帝国以後』は“反米主義”にあらず

 

Ⅱ 『帝国以後』から何を読みとるか

 

乱暴な仮説が導く明快な世界像

   養老孟司

グローバリズムへの徹底抗戦

   井尻千男

アメリカ批判から保守的英知へ

   西部 邁

アメリカ帝国」という虚妄

   ―――ヨーロッパからの反撃

   佐伯啓思

『帝国以後』への私注

   三木 亘

アメリカ・システムの興隆・崩壊の同時性について

   武者小路公秀

ヨーロッパ地政圏とアジア地域システム

   濱下武志

なぜアメリカは戦争をしたか

   池澤夏樹

残照の観察者として

   高成田享

核武装」 か 「米の保護領」 か

   ―――日本に二者択一を迫る書

   飯塚正人

 

Ⅲ 「帝国以後」と日本の選択

 

E・トッド+榊原英資小倉和夫+中馬清福

アメリカ帝国の解体

   ――システムの東と西、 日本とヨーロッパの比較

   E・トッド

独仏関係に比すべき日中関係

   榊原英資

アメリカ単独行動に歯止めをかける日米関係

   小倉和夫

<討論> 「帝国以後」と日本の選択

E・トッド(三浦信孝 訳)+榊原英資小倉和夫+(司会)中馬清福

 

<シンポジウムを終えて> イデオロギー的親米から真の自立へ

   榊原英資

<シンポジウムを終えて> 日本の未来に立ちはだかる難問

   中馬清福

 

Ⅳ 日米関係はどうあるべきか

   伊勢崎賢治榊原英資+西部 邁+小倉和夫

 

国連とアメリ

   伊勢崎賢治

変わるアジア、 変わらぬ日本外交

   榊原英資

左翼国家アメリカと戦後日本の錯誤

   西部 邁

アメリカ問題は日本問題

   小倉和夫

<討論> 日米関係はどうあるべきか

   伊勢崎賢治榊原英資+西部 邁+小倉和夫

 

感想

アメリカとは何だ?という

アメリカ論と言ってもいいでしょうか。

 

ただエマニュエル・トッドはフランス人。

フランスから見たアメリカ論とか

フランスから見えた日米関係という点では

とても斬新かつユニークです。

 

私たち日本人にはできない発想というか

おかしな固定観念をぶっ壊してくれますので

ああ、いかに自分が凝り固まっていたのか…と

ちょっと反省させられます。

 

私は若い頃は国際政治がわりと好きで

それこそ当時は国際ジャーナリストとして名を馳せていた

落合信彦さんの著書などを読みまくっていましたが

最近の海外情勢はちょっと疎くなっています。

 

たまには最新事情にキャッチアップするためにも

国際政治も勉強しなきゃという気持ちはありますが、

なにせ読みたい本が多すぎて

どうしても後回しになってしまうのですね。

 

とはいえ本書の初版が発行されたのは

2006年12月…全然最新事情じゃないじゃんという話しですが

まあそれでもエマニュエル・トッドの知見に

初めて触れた私としてはかなり新鮮な思いを味わいました。

 

本書が話題になっていた頃、

ちょうどイラク戦争後の混乱時ですが

この頃と現代では比較にならないほど

時代は進んでいるとは思います。

 

そして本書に書かれているような展開には

正直なっていないと言えそうです。

 

ただエマニュエル・トッドが述べる

中長期的な本質的な展開という点では

まだ過渡期とも言えますし、

実は彼の分析に近い方向に進んでいるのかもしれないと

思える部分もなきにしもあらずです。

 

この書評を書いている段階では

もしトラが、かくトラになりつつあり、

バイデンさんは大統領選から撤退するなど

おいおいアメリカは大丈夫かよ?と思ったりもします。

 

たぶん大丈夫ではないのでしょう。

 

圧倒的な軍事力で

言うことを聞かない国には脅しを掛けますけど

そんなの本当の強国のすることではありません。

 

トランプさんが2度めの大統領になっても

アメリカの地位は世界的に下がるのではないでしょうか。

 

本書に登場する日本人たちは

アメリカの提灯持ちのような人ではなく、

エマニュエル・トッドの述べることから

今後の日本の行く末を真剣に考えていて

とても好感が持てました。

 

日本の有識者と呼ばれる人たちは

もう無条件にアメリカ万歳の人か、

逆に反米の人か、

どちらかにクッキリ分かれてしまうんですよね。

 

でもそんなの知識人の姿勢としては

いかがなものかと思いますよ。

 

是々非々で考えないと

新しい知識がモノの役に立たなくなりますからね。

 

そういう点では本書の日本人たちは

変にアメリカにおもねるのでもなく、

変にエマニュエル・トッドを持ち上げるのでもなく、

参考にして、自分の頭で考えていて

その姿勢には感服しました。

 

それでは恒例の私がグッときた箇所をご紹介いたします。

 

大きな筋書きを隠蔽するために

細かい「事実」を報道することが、

いまではほとんどメディアの習い性になっている。

だからこういう大きな仮説を土台にした本を読むと、

必要以上にすっきりするのかもしれない。

(中略)

この本に書いてあることがすべて本当だなどとは、

夢にも思っていない。

しかし、こういうふうに考える「べき」なのである。

仮説が間違っていれば、訂正すればいい。

いまの日本の学界に欠けているのは、

この種の思い切った仮説である。

右も左も配慮して、

穏当な意見を吐くのが学者の仕事だと私は思わない。

それでは事実は現状の通りですと

いっているだけだからである。

(P.104)

 

これ養老孟司先生のコメントなのですが

確かに…と頷かされます。

 

突き詰めれば学問とは何か?

学者とはどういう存在か?

本質的に何を成すべきなのか?

 

学び問う。学ぶ者。

そういうことですよね。

養老先生、さすがの見識です。

 

経済において

(物作りが劣悪であるために)

厖大な貿易赤字を続け、

政治において

(人種葛藤が複雑である上に貧富の差が増大するために)

民主化が頓挫を来たし、

社会において

トックヴィルにより

「多数者の専制」とよばれた事態が進行するために)

俗悪化に歯止めが利かず、

そして文化において

(歴史・慣習・伝統の感覚が不足しているために)

一方では価値規範が溶解し

他方でキリスト教原理主義が台頭するという

矛盾に苛まれている、

それがアメリカである。

そんなものに帝国を名乗る資格はない。

アメリカがみずからをローマになぞらえるのは

笑止千万とみる著者の判断に評者も全幅の賛同を寄せたい。

(P.116)

 

こちらは西部邁さんのコメントです。

 

アメリカに対して

ボロクソに言っていますけど

まあ、それは違うと反論する人は少ないでしょうし

当のアメリカ人の中にも

そうなんだよね…と賛同しそうな人も多そうです。

 

問題は、こういう国が世界の覇権を握っていることであり、

今後、世界はどんな姿かたちを目指していくべきなのか?

ヨーロッパはそれに先んじているのか?

日本はその中でどうするのか?どうしたいのか?

ここが最重要でしょうか。

 

近代西欧文明はつきあいを知らない文明だと書いたが、

これはとりわけて、

それぞれ十九、二十世紀に世界覇権を握った

この島国連合にちて妥当するのかもしれない。

管理操作はつきあいではなく、

相手の人間をものとして扱う態度である。

つきあいがないと世界が閉じて不安がうまれる。

それで管理操作がうまくゆかないと、

相手がすべて敵に見えて、

戦争などというはだかの暴力でこれを圧服しようとする。

エラリ・クイーンが

「すべての殺人は自衛のため」だと言っているのと同様に、

すべての戦争は自衛のためであり、

閉じた人間存在の弱さのあらわれである。

(P.131)

 

本書が発行された頃から

現在に至るまで

アメリカはこの通りに進んでいると言えそうです。

もしかして弱者?

軍事力を過信して弱まるばかり?

 

歴史は変わり得る、

あるいは社会は変わり得るのです。

つまりこれは歴史哲学の問題です。

ですから善の枢軸の筆頭にあったアメリカ、

これが悪の枢軸に変わらないという保証はない。

歴史というものは、そういうものです。

この普遍的な歴史の長い流れを見た場合には、

もちろんパワーの後退もあるし、

悪の、あるいはリスクのちゅしんも変わっていくし、

安定要因も変わっていくでしょう。

(中略)

自由を犠牲にして安全をとるというのが、

これまでの日本の選択だったかもしれません。

しかし私は歴史は変わり得ると、

日本の選択というのは

長期的には変わり得るだろうと考えています。

忘却というのはいい言葉ではありません。

ただ、喪の作業の果てに…

きちんと過去を消化するという、

この喪の作業というのは絶対必要です。

単純に過去は忘れ得るものでありません。

(P.228)

 

これからの日本の選択はどのようなものになるのか?

主体的に変わるのか?

ただただ流されてしまうのか?

 

岸田政権には期待が持てないどころか

ちょっと絶望的に感じますよね。

あるべき未来よりも政権維持か…。

 

日本というのは皆さんが思うよりも

はるかにヨーロッパに近いし、

特にドイツに近い。

大きく言った場合ですよ、

小さな違いはもちろんありますけれども。

ドイツと日本の構造的な、

人類学的な社会の基底、

あるいはイデオロギー的な基底は

同一の構造を持っているんだということです。

(P.238)

 

これは余程の国際人でないと

実感としてはなかなか湧かないですけど

何となくそんなものかなという予測は立ちそうです。

歴史を見れば何となく…。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

前半部分はちょっと物足りなくて

ああ、やっぱり「帝国以後」から

読んだほうが良かったのかなと思ったのですが、

日本の論客たちの考えであったり、

エマニュエル・トッドを招いてのシンポジウムは

とても面白く読めました。

 

これでもう1冊のほうも楽しみになってきました。

 

ただ本書はエマニュエル・トッドの著書というよりは

いろんな方のコンピレーションのような感じですので

これぞエマニュエル・トッドという本が読みたいかな。

 

ちょっと今は読みたい本が目白押しですので

しばらく間を空けて

そのうちに読もうと思います。

 

それでは、また…。

 

 

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