ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

街場の中国論

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

「中国」。

ここ10年~20年の台頭には驚かされますね。

 

このまま行けば

アメリカを抜いて

世界最大の経済大国になっても

何ら不思議はないように思えます。

 

昔から眠れる獅子なんて言われて、

内部的に崩壊したりしてきましたけど

現代では非常に上手くやっているように見えます。

 

チャイナリスクなんて言葉もありますし、

13億人の人口を抱えるなんて

そんじょそこらの統治では問題が勃発しそうですけど

ITやAIなどのテクノロジーの領域でも

グングン世界を引っ張っていますし、

我が国においても学ぶべき点はあるのだろうなと思います。

 

人権問題や尖閣諸島や台湾などの領土問題など

どうしても私たちは中国をありのまま見ることがしにくいですが、

それでも、やっぱり、

しっかりと見つめておく必要はあると思うのです。

この国に関しては…。

 

今回ご紹介する書籍は、

【 街場の中国論 】 です。

 

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本書をピックアップした理由

『 街場の中国論 』

内田 樹 ミシマ社 を読みました。

 

まあ内田樹の著書に関してましては

数冊おきに必ず読むのが

ここ最近の私の読書傾向ですから

いつものパターン通りではあります。

 

そしてこの「街場」シリーズは

今までも数冊読んできましたが

毎度、とても勉強になり、好きなシリーズです。

 

ちなみに今まで読んだのは…

 

ka162701.hatenablog.com

 

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ka162701.hatenablog.com

 

意外と読んでましたね。

ただ私の積ん読棚には他にもあったんです。

 

何となく中国論を読むなら今だ!と感じまして

本書を手に取った次第でした。

 

目次

第1講 チャイナ・リスク

    ー誰が十三億人を統治できるのか?

第2講 中国の「脱亜入欧

    -どうしてホワイトハウスは首相の靖国参拝を止めないのか?

第3講 中華思想

    ーナショナリズムではない自民族中心主義

第4講 もしもアヘン戦争がなかったなら

    ー日中の近代化比較

第5講 文化大革命

    ー無責任な言説を思い出す

第6講 東西の文化交流

    ーファンタジーがもたらしたもの

第7講 中国の環境問題

    ーこのままなら破局

第8講 台湾

    ー重要な外交カードなのに…

第9講 中国の愛国教育

    ーやっぱり記憶にない

第10講 留日学生に見る愛国ナショナリズム

     ー人類館問題をめぐって

 

感想

こ・これは面白い。

非常に勉強になりました。

 

中国論となってますけど、

スタートは中国に関してなのですが

話しはそこだけに留まらず

人生論や物事の考え方の方向に進んでいきます。

 

内田さんらしいと言えばそれまでなのですが、

私、個人的にはとてもよい学びとなりました。

 

脳ってのはこういうふうに使わなきゃならんなと

つくづく思いましたね。

 

どんなふうに?という点については

下記、恒例の私がグッときた箇所をご紹介しながら

私がどう考えたかもお知らせいたします。

 

どれほどインサイダー情報に精通していても、

推論する人自身に強い主観的なバイアスがかかっていれば、

情報評価を誤ることはありえます。

逆に情報が限られていても、

自分の主観的なバイアスによる情報評価の歪みを

「勘定に入れる」習慣があれば、

適切な推論をすることは可能である。

私はそう考えています。

(P.3)

 

主観的なバイアス…。

こういう人って多いですよね。

いやもちろん私自身にも

そういうところはなきにしもあらずですが

情報評価を正しくするためには

「歪み」を「勘定」に入れる習慣という

プロセスが大事なのですね。

 

情報リテラシーということでしょうけど

このリテラシーが思いのほか難しく、

意外と「歪み」に気づかずに

「主観」こそが全てだと思っている人は

少なくないのだろうなと思いました。

 

「統治者の倫理にダブル・スタンダードを認めるのか、おまえは」

というふうに文句を言ってくる人がいると思うんですけど

統治者の倫理にはダブルどころか

マルチ・スタンダードが要るだろうと僕は思っています。

(P.27)

 

あ、これ賛成。

どうも日本人って白黒をハッキリ付けたがるというか、

それこそ自分か他者か、とか

これでなければならないバイアスが強いですよね。

 

でも冷静に考えてみれば

白でも黒でもないことは少なくありませんし、

それを「今」判断すると間違えてしまうシーンも多いです。

 

選択肢が二者択一であると

あまりにも視野が狭くなりますし、

我が国においては

二者択一しか判断基準がなかったことが

あの不幸な戦争に突入してしまった歴史があることを

私たちは忘れてはいけないのだろうなと思います。

 

それぞれの風土において

政体は次々と変化するけれど、

「変化する仕方は変化しない」ということを

書いていました。

これは名言だと思います。

(P.46)

 

こういう逆説的な発想が好きです。

変化する仕方は変化しない…。

 

世の中は変わるということだけは

不変である…みたないものですよね。

 

でもこういうところに真理はあると思います。

 

僕たちは「起きたこと」ばかりに気を取られて、

「起きなかったこと」については見逃しがちですけれども、

かのシャーロック・ホームズ

白銀号事件」で言っているように、

「起きてよいはずのことが起こらなかった」ということのうちには、

しばしば重大な情報が潜んでいるものです。

(P.89)

 

これも深いですね。

起こらなかったことに思いを馳せるというのは

なかなかできることではありませんし、

大衆にそれを期待するのは酷かもしれません。

 

しかしなぜ起こらなかったのか?という

発想で物事を考えると

起こったことの裏側であったり、

起こったことの深層にも辿り着けそうですね。

 

物事を見誤らないためには

重大な発想の転換と言えそうです。

 

創始者は自分にできることしか教えられないけれど、

祖述者は自分の力量を超えることを教えることができる。

教育方法としてどちらのほうがパフォーマンスが高いか、

考えるまでもないでしょう。

(P.104)

 

この言葉は

孔子の「述べて作らず」から来てるんですけど

よ~く考えれば

私たちが日常的に考えていること、やってることのなかで

本当の意味でオリジナリティがあるものなんて

ほとんどないのかもしれませんね。

 

オリジナルでなくたって

やっぱりいいものはいい。

それを伝えるのも価値が高いですね。

 

政策的には

大きな政府」か「小さな政府」かという

二者択一でしか論じられませんが、

「小さな政府をたくさん」という

オプションもありうると僕は思います。

(中略)

ほかのことではなんでもアメリカの真似をする日本人が、

どうしてアメリカの政治システムの

いちばん効率的な部分についてだけは

学ぼうとしないのでしょう。

(P.127~128)

 

内田さんは他の著書でも述べてますが

廃藩置県の反対、

廃県置藩をすべきという考えをお持ちです。

 

それがアメリカの連邦制を真似ろということですが、

いかがでしょうか?

これは非常に興味深い政策のように思えます。

 

ペリーが来航して

欧米列強が押し寄せてきたとき

日本には幕末時点で270もの藩があり、

その中の有力な藩は

いつでも幕府に変わって政治を運営できたのですね。

 

だからこそ明治維新は成功したとも言えますが

今、自民党が政権を独占し続けている弊害が

あまりにも大きくなっている昨今、

廃県置藩こそがブレークスルーになるような気がします。

 

日本が最終的に欧米列強の侵略を免れたのは、

日本の文化の高さによってだと思います。

そのような知的リソースが

中国のように中央集権的に

特権的な階層にだけ集中していたのではなく、

広く日本のすみずみにまでゆきわたっていたことが、

日本を救ったのではないでしょうか。

(P.132)

 

幕末に来日した欧米人たちは

私たちの祖先たちを絶賛していたとも言いますね。

 

民度の高さと言っていいのかわかりませんが、

それだけ当時の日本人には

欧米人にスゴイと思わせる何かがあったのですね。

 

「革命」と「クーデタ」と「反乱」は

政治学的には定義が違うんですよ。

この機会に覚えておきましょう。

「クーデタ」は政権内部での権力闘争のことでdす。

「反乱」は突発的に起きてしまうので、

現体制を打倒したあとに、

どのような社会を構築するのかの

ヴィジョンを持っていません。

それに対して、

革命は政体の根本的な変換であり、

かつそれを領導する原理の下絵が描かれている。

革命の担い手たちは

自分たちがどのような体制を実現するために

戦っているのかを知っている。

ラディカルな体制変革でありながら、

来るべき世界についての明確なヴィジョンがある。

この相反する条件を同時に満たすものだけが

「革命」と言われます。

(P.157)

 

この定義が正しいのかはわかりませんが、

結構、納得しちゃいました。

 

こういう混同しやすい言葉を

しっかり定義付けておくのは大事ですね。

 

「とにかく黒白決めないと気分が悪い」という人が

日本人には多い

(もともとはそれほど多くなかったと思うのですが、

どんどん増えてきましたね。

今は政治家も官僚もメディアも知識人も

そのタイプの「話をはっきりさせたがる人たち」ばかりです)。

僕はそういう態度がつねに正しいとは思わないし、

それがつねに国益の増大に寄与するとも思わない。

(P.201)

 

これは共感します。

日中戦争大東亜戦争に突入した時って

こんな感じだったのだろうなと思うんです。

 

黒か白でハッキリするならまだしも、

完全に黒、黒以外はない、

黒じゃない人は日本人じゃない、

そんな風潮がありますもんね。

 

これってシンプルに視野が狭いですし、

知性の欠如と言えないでしょうか。

 

評価

おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。

非常に面白かったです。

 

世界を見回しても

良くも悪くも中国は注目度が高いですよね。

 

今、中国を理解しておかないと

様々な面で後れを取ったり

間違った判断をしかねないとも言えるかもしれません。

 

内田さんは別に中国の専門家ではありませんし、

国際政治が専門ではありませんけど

知性と教養をベースに中国を見れば

こんな結論が導き出されるんだ…という

非常に知的な発想が本書にはあります。

 

不思議なことに

2007年に発行された本書は

全く古さを感じないんです。

それだけ本質を突いているということでしょうか?

 

上っ面のインフォメーションではなく

本書はインテリジェンスで構成されているように感じました。

おススメです。

 

ちなみに本書を読んだ後に

魯迅の書いた阿Q正伝を読むと

さらに中国に対する理解は進むと思います。

 

ka162701.hatenablog.com

 

それでは、また…。

 

 

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