おはようございます。
読書がライフワークになっている
医療業界のコンサルタント
ジーネット株式会社の小野勝広です。
未来を生きるためには
歴史から学ぶ必要があると私は考えています。
賢者は歴史に学ぶってやつです。
少し前ですが
日野自動車がとんでもない不祥事を起こしました。
ずっと企業不祥事は続いていますね。
情けないくらいに。
これはなぜなのでしょうか?
企業の現場には
悪人ばかりが蔓延っているわけではないと思うんですよ。
それでも不祥事が連発している。
企業という存在自体に
問題が内包されているのでしょうか?
それとも制度?仕組み?
私自身も企業人ですし、
小さな会社とはいえ代表を務めていますので
不祥事が起こる内的要因は
できるだけ取り除いていきたいです。
今回ご紹介する書籍は、
【 鼠 鈴木商店焼討ち事件 】 です。
本書をピックアップした理由
『 鼠 鈴木商店焼討ち事件 』
城山 三郎 文春文庫 を読みました。
鈴木商店をご存知でしょうか?
大正から昭和の初めには
三井や三菱を凌駕する総合商社だったのですね。
私はこの鈴木商店を拡大させた
金子直吉という人物に興味があり、
以前にも関連書籍を読んだことがありました。
何せもう随分前のことですし、
城山三郎ファンの私としては
本書を見つけた際には即買いしまして
積ん読本棚で眠っていました。
実は他にもまだ何冊か
城山作品は眠っているのですが
今回は企業について学びたく
敢えて本書を選びました。
私の個人的見解ですけど
城山さんの大正から昭和を題材とした作品は
秀逸なものが多いと思ってます。
例えば今まで読んだものですと…
おっと、紹介し過ぎでしょうか?(笑)
いずれも非常に面白かったですから
気になるものがあれば是非読んでみて下さいね。
さてさて鈴木商店です~。
目次
なし
感想
もうとにかく城山ワールドは
グググっと引き込まれます。
人物描写が秀逸すぎます。
私が勝手に持っていたイメージとは
若干異なるところもなきにしもあらずでしたが、
それはそれとして
城山さんの綿密な取材を経ての見方は
尊重するに値します。
今はなき鈴木商店。
しかし鈴木商店の系列というか
流れを受けて現在も存続する企業は
実は多いのですね。
いくつかあげてみますと…
これでも一部ですから
とんでもない影響力ですよね。
まあ社史としては二転三転して
鈴木商店の源流を汲むと言いずらい会社もあるでしょうけど
当時はそれくらいに様々な事業に進出していた
日本を代表する商社だったんですね。
もともとは川越藩の鈴木岩治郎が
当時番頭をしていた辰巳屋の
のれんわけで鈴木商店を開業したそうですが、
本当に小さなお店だったのでしょう。
これを大きく変えたのが金子直吉です。
彼が丁稚奉公で入ってから
鈴木商店は大きく発展し、
最初は神戸で名を上げて
その後、日本、世界へと羽ばたいていきます。
鈴木家と金子直吉が固い信頼関係を持って
世界に名だたる商社となっていくのですね。
そしてさらに飛躍したのが第一次世界大戦です。
独創的な手法で「超」積極展開を図り、
三井や三菱を凌駕する商社になっていきます。
しかしその勢いを止めたのが
本書で取り上げている「米騒動」です。
鈴木商店が米の買い占めを行っている悪徳業者であると攻撃。
これにより民衆の反感を買い、
店舗を焼き打ちされてしまうのです。
ここが城山三郎さんの真骨頂です。
多くの関係者に取材、調査して
当時の鈴木商店が米を買い占めていた事実はない、
風評被害であると断定し、
三井と大阪朝日新聞の共同謀議としています。
これが本当に真実なのかはわかりませんが、
城山さんの客観的な取材の結果ですので
一定の信憑性はあるとは思います。
本書のメインテーマはここです。
なぜ鈴木商店は焼き打ちされたのか?
また第三者も含めて丁寧な取材がなされており、
真実に近づこうとする城山さんの姿勢に好感が持てます。
その後の鈴木商店は
第一次世界大戦後の反動で大苦戦、
株式を上場せずに銀行からの借入のみで運転資金を賄っていたため、
大打撃を受けることになり、
また関東大震災の被害により
メインバンクであった台湾銀行とともに
震災手形を利用して損失の穴埋めをするものの
世界的な不景気の波をモロに被り、
昭和金融恐慌のなかで
事業停止、清算に追い込まれていきます。
城山さんとしては
飛ぶ鳥を落とす勢いだった
鈴木商店が没落する要因となった
米騒動、焼き打ち事件を取り上げることにより
企業の栄枯盛衰を描こうとされたのでしょうか。
また金子直吉という人物像。
そして潰してしまった。
そう言えそうです。
本書に取り上げられているように
優秀な部下たちからは様々な提言があったものの
金子直吉の頭の固さが
完全に裏目に出てしまったようです。
と、あらすじをざっと書きましたが
時代が急激に動いた頃でもあり、
読んでいてドキドキするような展開です。
著名な政治家も登場しますし、
それが金子直吉の動きを加速させたり減退させたりして
非常に興味深く感じました。
城山さんは金子直吉の良い面だけでなく、
短所や欠点もつまびらかにしており
冷静さと客観性を持っているので
時代背景とともにスッと頭に入ってくるのですね。
フィクションとノンフィクションの中間的なポジションで
歴史的事実を追い掛けており、
本書は必読の書と言っていいでしょう。
単に読み物としても楽しめますし、
歴史の勉強にもなりますね。
私は両面で大いに楽しんじゃいましたが
それだけの価値ある良書と感じました。
すでに現代から見たら
かなりニッチな分野かもしれませんが、
とても勉強になりますよ。
評価
おススメ度は ★★★★★ と満点といたします。
城山作品はわりと満点が多いです。
それだけ私の心には響いてくる内容が多いのでしょう。
本屋や図書館やネットで
まだ未読の城山作品を見ると
速攻で購入、借りたりしておりますが
まだまだ読んでないものがあるんです。
令和の時代に城山作品を貪るように読む人なんて
そんなにいないんだろうなと自分でも思いますけど、
でもいいものはいいんです。
たぶんかつて城山作品にハマった方は
わかるよ~と言って下さるでしょうし、
今でも時々読み返している人もいらっしゃると思います。
城山作品には勇気と挑戦があるんですよね。
そしてその全ては人間が動いているという
そこを中心に描かれているのが素晴らしいです。
しばらくしたら
また別の城山作品をご紹介することでしょう。
それでは、また…。
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